百六十二 異なった点 ページ12
私が飛び起きたのはオロチさんの声が聞こえたからだった。
だけど何も見えない。
それは視界のすべてが桜の花で埋まれていたからだろう。
予想はだいたいつく。
寝ている間、無意識のうちに……といった具合だ。
「A、もう昼だが……」
微かにそう聞こえた。
まずはこの部屋から出なければ窒息してしまう。
私は花びらを掻き分け、扉を目指した。
扉を開けると、部屋の中に詰まっていた花びらがざらざらと廊下に流れ込んだ。
扉の前に居たオロチさんは花びらまみれになっていた。
「何をしていた……」
「な、なにもしていないです……。無意識のうちに出しちゃったみたいで……」
体についた花びらを払い落としながらオロチさんは怪訝な顔をした。
「これでは外もまともに歩けないな。どこにいたって敵に居場所を知られてしまう」
「でもどうやればいいのか分からなくて……」
オロチさんは部屋を片付けたら調べに行こうと言った。
部屋を片付けている時、何故こんなに制御できないのかと尋ねると、オロチさんは私が妖怪としての力に目覚めてから日が浅いからと言った。
胎児の私に力が宿り、人として産まれた時私は確かに人であったと。
そう記憶している。
「妖怪と近しい者になり、力が本格的に目覚め出し妖怪となった今、完全なる力が目覚めたと言えばおかしな話ではない。……だが人であった頃、一般人と異なった点は本当になかったのか」
「特には……」
そう答えるとオロチさんは肩を落とし、花びらを入れた袋を担いで部屋を出ていってしまった。
「異なった点……ぁ」
そこで私は幼い頃に出くわした不思議なことを思い出した。
でもそれはオロチさんにも言ったことがあるはずだ。
「忘れてるのかなぁ……」
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作者名:剣城京菜 | 作成日時:2018年12月10日 18時