百五十二 妖気晶 ページ2
妖魔界の外側と内側の境が見えてくると見覚えのある長身の男が仁王立ちをしていた。
ぐっと目を細め確認する。
それはいつにもまして不機嫌な顔をしたぬらりひょんさんだった。
「エンマ大王さまがお呼びだ」
長い髪を翻しカツカツと歩く。
屋敷につくと私たちは玉座の間に通された。
そこにはエンマ大王さまが頭を抱えながら座っていた。
私たちに気づくとエンマ大王さまは慌てた様子で立ち上がる。
「……3人とも無事そうで何よりだ」
咳払いをして座り直す。
「ここに来てもらったのはもう察してはいるとは思うが、今朝まであった出来事を報告してもらいたい」
私たちは妖魔界の外側であったことを話した。
「黒雨、といったか。特徴は?」
「えっと……髪は肩より少し短くて、黒の着物に紫の帯をしていて声は中性的で、それと影から手が沢山出てきました」
エンマ大王さまは眉を潜める。
「他に誰か居なかったか?」
私とオロチさんとヒカリオロチさんは顔を見合わせた。
誰も大きな赤い目と大きな手について触れなかった。
2人が乗り込んで来たとき、あれはいつの間にか見えなくなっていた。
だけどその後声を聞いたはずだ。
「あの……」
私は大きな赤い目と大きな手について話したが、2人は声すらも聞こえていなかったらしい。
「……おそらくそれは敵の親玉だろう。誘拐してまでAを狙うとなると目的もだいぶ目に見えてきた。Aの正体も明らかになった今、早急に匿わなければならない」
「正体……?」
私に正体などない。
私は死んで妖怪と人との狭間をさまよい、そしてやっと妖怪としての存在となった。
そう勝手に思ってしまっていたが、それは思い過ごしだったのだろうか。
「妖怪となった今、新たな力を手に入れた。以前からその力は発揮してはいたがこれからはもっと自由に使えるだろう」
隣にいたぬらりひょんさんはどこからか両手に収まる程の透明な丸い水晶を私に手渡した。
「それは妖気晶。簡易的に妖気を測るものだ。Aの力を見せてくれるか」
「そんなこと言われてもど、どうすれば……」
力の使い方などよくわからない。
それなのに早くと言わんばかりに視線が向けられる。
すると隣にいたオロチさんが私の手の甲を掴み、妖気晶を両手で包み込んだ。
妖気晶がほのかに温かみを帯びてくる。
「あとは目を閉じて手のひらに意識を集中させろ」
言われた通り、私は目を瞑り手のひらに意識を集中させた。
29人がお気に入り
「オリジナル」関連の作品
この作品を含むプレイリスト ( リスト作成 )
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:剣城京菜 | 作成日時:2018年12月10日 18時