百五十五 大事な話 ページ5
「道を閉ざしたのは全てじゃない。門の先にあるあの場所だけ見張り付きで開けていたんだ。治癒の力は絶大、敵はそれをこちら側に渡さないように狙っていた。20年程前に人間界で敵と力を巡り交戦していた時期があったから力の行方は分かってはいたがまだ胎児だったこともあってどうこうできるものじゃなかったんだ」
「……そう、ですか」
自分の中で気持ちと考えが追いついて居なかった。
「Aが桜神の力を受け継いだのなら、敵に狙われていた理由も納得できる。今の状況では更に狙われる可能性があがっただろう。Aが子を作らず力も受け継がないとすれば世界は止まってしまう。だから2つの世界の為に生きてはくれないだろうか」
「私は……」
"生きて"その言葉はきっとこれからもまとわりついてくる。
「生きたいと、もう一度やり直したいと思うのは自分の意思で決めました。でも……今はまだ中途半端な気持ちです。ここに来てからいろいろありました。まだ片付いていないこともありますし、心の整理をしたいです。だから、2つの世界の為にというのは保留にして貰えますか」
「……そうだよな、生きると決めたのなら今はそれでいい。しばらくじっくりと考えろ。今日は自由にゆっくりと休むといい。オロチはAの付き添いを頼む。ヒカリオロチとぬらりひょんは部屋の片付けを引き続き頼んだ。俺は別件の仕事を片付けて来るぜ」
エンマ大王さまはそう言ってそそくさと部屋を出ていった。
「……エンマ大王さま忙しそうです」
関心のため息をつくと何故かぬらりひょんさんは大きな舌打ちをした。
「用が無いなら早く出ていけ」
杖の先で背中を押され、無理矢理部屋を追い出されてしまった。
あとからオロチさんが出てきた。
特に会話することなく、沈黙の空気が流れた。
それを払拭したのはオロチさんだった。
「……大事な話がある」
「私も……です」
場所をかえようとオロチさんのあとについていくと、部屋ではなく外に出た。
どこまで行くのかと問うとすぐそこだと言って具体的な目的地までは答えてくれなかった。
「ぁ、ここ……」
オロチさんが立ち止まったのは一度訪れたことのある甘味処だった。
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作者名:剣城京菜 | 作成日時:2018年12月10日 18時