さくらの営み 4【オロチ】 (ページ37)

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百八十七隠し部屋ページ37

土砂降りの雨。

真っ暗な空。

水しぶきをあげ私はひたすら逃げる。

1つの灯りを頼りに向かっていた。

灯りが突然、黒色に生まれ変わる。

「……っっ‼」

体を掴まれるような感覚と似たような出来事をフラッシュバックさせる。

「ぁ……っ」

胸が、心臓がえぐられる。

ぐちゃぐちゃにされる。

水たまりに落ちた赤い雫は溶けて消えていく。

何度も落とし重ねては薄く薄く赤く色づき、やがて赤黒く濁りができる。

「……っっ‼」

ベッドから転げ落ちたところで私はようやく目を覚ました。

嫌な汗ばかりが着物を濡らす。

夢だとそう思わなければどうにかなってしまいそうだった。

今度はきちんとベッドの上で寝ようとベッドによじ登った。

すると誰かが部屋の扉を叩いた。

「……誰ですか？」

部屋の扉を叩いた犯人は猫きよさんだった。

「凄い音が聞こえたニャ。まさかベッドから落ちたわけではないニャ」

「そのまさかです……」

猫きよさんは心配することなく、鼻で笑ってきた。

「ベビーベッドの購入を検討した方が良さそうですね」

「……いりません。ところでオロチさんの様子はどうですか？」

2人は顔を見合わせ合図を送る。

「最初何度かこっちに来ようとしていたニャ」

「ですが今はしばらく音沙汰ありません。きっと眠っているのでしょう」

眠っているのはいいとしてオロチさんの行動に少し不審感を抱いた。

私が脱走しない限り、基本屋敷内は安全なはずだ。

脱走しようにも風邪を引いて寝込んでいたので余程のことがない限りその心配はいらない。

それ程信用してくれていないからなのかも知れないが。

「そんなに心配なら様子を見に行けばいいニャ。すぐそこの部屋の奥にいるニャ」

「……奥？」

2人が指し示したのは2度ほど入ったことのある小さな書斎だった。

記憶の限り中に他の部屋なんてなかったはずだ。

部屋に鍵はかかれておらず、少しだけ隙間があいていた。

中はやっぱり散らかったままだった。

そして記憶通り他の部屋なんてものはなかった。

うろうろ歩き回っていると壁の向こうからコトリと何か落っこちた音がした。

音がした壁に近づき近くの壁を調べていると不自然に入り組んだスペースの横にドアノブがあるのが見えた。