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百八十 再生 ページ30

息がしたくてしたくてたまらなかった。

オロチさんの首元に顔を埋めて必死に耐える。

苦しくて苦しくて自分で自分の腕を引っ掻いた。

苦しさを痛みで紛らわしても苦しさは無くならなかった。

視界がぼやけていく中で私は何故か昔のことを思い出していた。

小さな私は桜の木が沢山生えた場所にいた。

片手にはピンクの巾着、もう片方には繋いでいたはずの手のない手。

記憶はぷつりぷつりと途切れながら再生していく。

大きな桜の木を見上げる私。

綺麗なエメラルドグリーン。

優しい香りと雰囲気に相応しくないつんけんした態度。

真っ白な肌は桜の光でうっすらとピンクがかる。

優しい光に挿し込んだ闇。

獣の唸り声。

血のついた手は紫の着物を赤く汚す。

赤色が付着した牙を剥き出しにした口が笑う。


「……‼」


自分の中で1つ繋がった。

目を開けると黒狼が鋭い牙を剥き出してにやりと笑った。

再生した記憶の獣とダブる。

やっぱり犬なんかじゃなかったのだと私は悟った。

でもそれを知ったって、もうどうすることもできない。

力がうまく入らず引っ掻く手もだらんと垂れる。


「土遁の術‼」


外側から1つの小さな穴があき、そこから膜が破れ水がどっと溢れていった。

オロチさんごと地面に倒れるとオロチさんは水を吐き、体を起こした。


「土蜘蛛殿……」


跳ね上げた髪型に赤い隈取、歌舞伎役者のような出で立ち。

彼らもまた妖怪なのは見て取れた。


「オロチよ、お主は元祖軍の為によく働いてくれた。窮地に陥れば手を貸すのが務めよ。さぁ、我ら元祖軍‼仲間の為に向かい打つぞ‼」


「おー‼」


日々を過ごしてきた平和な世界が戦場に変わる。


「大勢で乗り込もうと同じこと‼」


黒狼は闇に溶け込み、元祖軍を翻弄する。


「姫を殺るのは俺だから脳筋は手出ししないでよね」


黒雨の無数の大きな影の手が私に伸びる。

そのたびにオロチさんが双竜で噛みつき引き千切った。

百八十一 戦う術→←百七十九 皮肉



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設定タグ:妖怪ウォッチ , オロチ , 剣城京菜   
作品ジャンル:アニメ
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作者名:剣城京菜 | 作成日時:2018年12月10日 18時

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