百五十一 生きたい ページ1
「わ、たしは……‼もう一度生きたい……っ"妖怪として"、オロチさんともう一度……もう一度……っっ‼」
大雨に紛れ頬を伝った涙がオロチさんの傷口に染み込んだ。
すると空から1枚、ひらひらと綺麗な薄ピンクの花びらが吸い寄せられるように私の手のひらに落ちた。
「──……‼」
1枚の花びらはふるふると震えるといくつもの細い光を放ち、そこから爆発するように無数の同じ色の花びらが溢れ出してきた。
花のシャワーを浴び、呆然としていると黒雨が
「……ああ、これは厄介なことになったな。悔しいけどこれじゃ勝ち目ないや」
といい、闇に溶けていってしまった。
そして闇に溶けていくのと同時に空は晴れ、明るさを取り戻した。
「待てっ‼……駄目だ。見失ってしまった……」
ヒカリオロチさんはゆっくりと地へ降りてくる。
「……どうして私」
自分の姿を見て私は何が起こったのか考えた。
着ていたはずの白い着物ではなく淡いピンクの着物に桜の刺繍が施されたものを身に着け、紅色の羽織に山吹色の帯を巻いていた。
更には体中にあった傷は全て無くなっていた。
「それは、Aが妖怪になることを認めたからだ……」
その声に不意に顔をあげる。
ヒカリオロチさんは目を見開き、オロチさんの顔を覗き込んだ。
恐る恐る私は視線を下に向ける。
「……あぁ。その姿は新しい自分、新しく始めるにはぴったりだ」
「傷は……?」
着物の穴と血は残っていたものの、大きな傷口は跡形なく綺麗に無くなっていた。
「……オロチ。平気なのか……?」
「あぁ、Aが"また"治してくれたからな。寧ろ前より良くなった気がするな。……話はあとだ。とりあえずここを離れるぞ」
オロチさんは嘘のように軽々と体を起こすと着物についた泥をはらった。
「……オロチの言う通りだ。ここにいては危ない。言いたいことはいろいろあると思うが今は帰ろう」
「……はい」
立ち上がろうとすると、妙に体が軽くなっているのを感じた。
2人あとを追いかけ私は帰路についた。
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作者名:剣城京菜 | 作成日時:2018年12月10日 18時