百二十六 拒絶 ページ26
大雨に打たれ続け、私は大声で泣いた。
こんなにも泣いているのに誰も気づかず通り過ぎる。
やがて辺りは暗くなり始め、街頭が付き始める。
顔を伏せ、アスファルトに打ちつけられる雨に涙を混じらせる。
すると目の前に誰かの足が見えた。
それは以前にも見たことがあるものだった。
「知ってしまったのか……」
「オ、ロチさん……っっわた、し……死んで……っっ痛くて……っっ‼」
顔を上げると綺麗な瞳の色は、闇夜の色と絶望の色が深く落とされていた。
ふわふわした髪は雨に濡れ、束になりオロチさんは力が抜けるように膝から崩れた。
そして冷え切った手で私の腕を掴むとオロチさんは強く、強く抱きしめた。
オロチさんは頬を擦り寄せながら、震えた声で囁いた。
「何も言うな……。何も言わず私の元へ来い」
「──……うん」
冷たい体に私は拠り所を求め、腕を回す。
オロチさんは私を大事に抱きかかえ、大雨の中を歩き出した。
私は目を逸らすようにオロチさんの胸に顔を埋める。
雨がやんだと思い、顔を上げるといつの間にか妖魔界で私が倒れていたという門の前にいた。
「ご苦労だった、オロチ」
そこにはエンマ大王さまとぬらりひょんさんがいた。
「何故勝手にAを人間界に返したのですか。Aのことは全て私に任せて欲しいと、エンマ大王さまも納得したうえで……」
オロチさんは眉間にしわを寄せ、エンマ大王さまを睨みつけていた。
「それはオロチがいつまでもAが死んでいることを打ち明けず引きずっていたからだ。引きずれば知ったとき辛い思いをするのはAとオロチであって……」
「その結果どうなったと……っっ⁉私のことはどうでもいい、Aさえ無事であればよかったものの……っっ‼」
すると横にいたぬらりひょんさんが杖をオロチさんとエンマ大王さまの間にかざし、言い合いを止めた。
「今はくだらない言い合いをしている場合ではない。傷の手当と、エンマ大王さまは仕事があるでしょう」
ぬらりひょんさんはエンマ大王さまを急かし、門を抜けていった。
オロチさんは納得のいかない表情で歩き出した。
「オロチさんは知っていたんですか?私が死んでいたことを……」
「Aが目を覚まし敵の刺客である容疑がかけられたとき、ぬらりひょんがAが刺客である証拠をとってくるようにエンマ大王さまから言われたことは覚えているか。ぬらりひょんは人間界から戸籍を盗み見たそうだが、桜風家の戸籍にはAの名前は無かったそうだ」
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紅桜(プロフ) - 楽しみにしてます♪頑張ってください! (2018年12月11日 20時) (レス) id: 84fb339dd8 (このIDを非表示/違反報告)
剣城京菜(プロフ) - 紅桜さん» ありがとうございます!今作は大変長編となっていますので、今後も楽しんでくれると嬉しいです(^^♪ (2018年12月11日 18時) (レス) id: 6021a386db (このIDを非表示/違反報告)
紅桜(プロフ) - まさかの展開で驚きました...!とてもおもしろかったです!続きがきになります(≧∇≦) (2018年12月10日 21時) (レス) id: 84fb339dd8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:剣城京菜 | 作成日時:2018年10月14日 12時