百二十一 見えざる者 ページ21
黒猫が見えなくなったのを確認し、門の内側へ入った。
玄関の前に立つと私はドアレバーを下ろし、手前に引いた。
鍵は開いていた。
夕方なのに中は真っ暗だった。
「お母さん、お父さん。……いるの？」
テレビの音もしない。
靴を脱ぎ、キッチンを覗き込んだが母の姿はなかった。
リビングに入っても両親の姿はない。
テレビも電気もついていない。
「……まさか鍵つけっぱなしででかけたのかなぁ？」
ソファにバッグを放り投げ、その上にどすんと腰をおろした。
ソファの前にあるテーブルに置かれたリモコンを手に取り、電源を入れた。
『それでは次のニュースです。さくら住宅街に住む当時18歳の桜風Aさんが……なってから今日で……をむかえました。近隣住民によると桜風さんは真面目で大人しく、人の反感を買うような子ではないと述べていました。事件当日……』
「──……」
リモコンをそっと元の位置に戻し、私は腰をあげた。
丁度その時、視界の端っこに人が立っているのが見えた。
「お父さん……」
廊下からこちらを見ていた父は最後に見たときより随分と痩せていた。
父のもとに急いで駆け寄ると父は私の横を横切って歩き出した。
「お、父さん……？」
父はテーブルに置かれたリモコンを手に取り、テレビをじっと見つめていた。
「ねぇってば……。ニュースなんか見てないで私を見て……？私ここにいるよ……？」
目の前までいったが、視線が全く合わなかった。
わざとなどではない。
まるで私が見えてないようだった。
「どうして……？」
父はテレビを消すとリモコンをソファに投げ、私に振り向きもせず廊下を出ていった。
あとを追おうと私も廊下へ出た。
「なおってない……」
正面の壁にかけた小さな鏡が私を映した。
その姿は元の私に戻っておらず、白髪とピンクの瞳を持っていた。
「どうにかしてもらわなきゃ……。このままじゃ戻ってきた意味がない……」
私は父を追いかけるのをやめ、家を飛び出した。
この人間界にも妖怪がいると聞いた。
それなら私を元に戻す方法が分かるかもしれない。
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紅桜(プロフ) - 楽しみにしてます♪頑張ってください！ (2018年12月11日 20時) (
レス) id: 84fb339dd8 (このIDを非表示/違反報告)
剣城京菜(プロフ) - 紅桜さん» ありがとうございます！今作は大変長編となっていますので、今後も楽しんでくれると嬉しいです(^^♪ (2018年12月11日 18時) (レス) id: 6021a386db (このIDを非表示/違反報告)
紅桜(プロフ) - まさかの展開で驚きました．．．！とてもおもしろかったです！続きがきになります(≧∇≦) (2018年12月10日 21時) (レス) id: 84fb339dd8 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：剣城京菜 | 作成日時：2018年10月14日 12時
