百十九 言えてないこと ページ19
やっと帰ることができるのだと思うと、一気に気が楽になった。
少し急ぎ気味に部屋の片付けをした。
バッグを持って部屋を飛び出す。
誰も居はしないが一呼吸をおき、玉座の間に向かった。
と言っても玉座の間がどこにあるか分かっていなかった。
うろうろしていると猫と犬の妖怪が現れた。
「エンマ大王さまがお待ちニャ。ぼさっとしていないでついてくるニャ」
叱られながらついていくと見覚えのある大きな扉に辿り着いた。
扉を開けるとエンマ大王さまがこちらを振り向いた。
「ああ、遅かったな」
「迷いました……」
エンマ大王さまは部屋から出ると入り口の方へ歩き出した。
そのあとを私は不審に思いながらついていく。
「手荒な真似をして悪かったな。……短い間だったが、この世界はどうだった」
「……姿が違うだけです。意思も、気持ちも人と変わりません。それどころか気持ち悪いくらいに良くしてくれました……」
エンマ大王さまはにっと口の端を開けた。
「そうか。ここの者たちはそういう奴らばかりだ。この世界も中々悪くないだろ?」
「そう……ですね」
しばらく歩いていると以前私が見つけた人間界へ続く道に辿り着いた。
道と言うよりはトンネルだ。
中は真っ暗で本当にその先にあるのかが疑わしい。
「さぁ、帰るといい」
エンマ大王さまは軽く私の背を押した。
私は2歩足を出すとぴたりととまり、振り返った。
「……あの、オロチさんは?私まだオロチさんに言えてないことが……」
「オロチはしばらく帰ってこれない。Aが人間界に帰ることは今朝伝えた。……早く帰るんだ。もし仮に戻って困ったことがあれは遠慮なく俺らを頼ってくれ。俺ら妖怪はAの味方だ。……勿論オロチも」
エンマ大王さまは私の肩を掴み、強く押す。
背中を見せると弾くように私の背を押し出した。
「あ、あの……」
振り返るとエンマ大王さまは1歩後ろへ下がった。
もう、なにも言えなかった。
私は深々と頭を下げ、早足でその道の先へ進んだ。
「……ありがとうございました、オロチさん」
30人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
紅桜(プロフ) - 楽しみにしてます♪頑張ってください! (2018年12月11日 20時) (レス) id: 84fb339dd8 (このIDを非表示/違反報告)
剣城京菜(プロフ) - 紅桜さん» ありがとうございます!今作は大変長編となっていますので、今後も楽しんでくれると嬉しいです(^^♪ (2018年12月11日 18時) (レス) id: 6021a386db (このIDを非表示/違反報告)
紅桜(プロフ) - まさかの展開で驚きました...!とてもおもしろかったです!続きがきになります(≧∇≦) (2018年12月10日 21時) (レス) id: 84fb339dd8 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:剣城京菜 | 作成日時:2018年10月14日 12時