さくらの営み １【オロチ】

四十九 小さな温もり ページ49

一瞬動きが鈍ったのをつかれ、私は両腕を強く掴まれてしまった。


「……そうではない。私はただ理由も分からないまま、狙われるのを自分のせいにしているのがくだらないと言ったんだ。興味がないと言ったのは……私が口下手なだけで思わないことを口走ってしまっただけだ……。厄介だとは思っていない」


オロチさんは困り果てた顔をしている。


「でも、私がいることで誰かが傷つくのは変わらない……」


私は逃げるように顔を背ける。


「だが貴様には誰かを守りたい意思があった。行動力がある。それだけで充分なはずだ」


「オロチさんになにが分かるんですか……⁉オロチさんには強い力がある‼でも私には何もない……っっ‼私のせいで怪我したくせに……‼」


私は力を振り絞って手を前に押し出した。

強く握られていた手は弱まり、するりと抜けると私はそのままオロチさんとぶつかった。

何も掴まない手は私の腰へまわされる。


「あれは私が自分を過信したせいだ……‼少なくともあの時止められなければ一方的にやられていただろう。その後も私をおぶって必死に走った。あんなこと、簡単に出来ることではない。私はAに"救われた"それは事実だ」


強く、強く抱きしめられる。

小さくて温かい。


「全てがAのせいにはならないはずだ。黒魔はAがこちらに来る前からいたからな。だから──……」

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