十五 黒魔 ページ15
「……残骸?」
「私たち妖怪側は奴らを黒魔と呼んでいる。奴らは人間の残骸だ。人間は複雑だ。喜び、悲しみ、怒り、妬み、嫉妬……様々な感情、感覚で成り立っている。だが黒き心が増幅すればその他は黒に染まり、残るのは黒き心のみ。黒く染まればまっ破滅が待っている。奴らはその破滅の中から生まれた黒き心の残骸だ」
男の子は膝の上に置いた手を爪が食い込むほどに握り込んだ。
「……人間がどうして妖魔界に?」
「迷惑な話だ。だが奴らが妖魔界に現れたのは18年前からだ。当時は人間界と妖魔界は自由に行き来出来たからな。……とはいえ人間界に送られては現状が酷くなるだけだ。本当はたった一人の為に道を開けたくはないのだが」
じろりとこちらをにらみつける。
まるで獲物に目をつけたかのように、金色の瞳をギラつかせた。
蛇に睨まれた蛙とはこのことだ。
しばらく動けないまま会話は途切れ、無の時間が続いた。
男の子は1ミリたりとも動かない。
わずかに空いた扉からオレンジの光が漏れ出していた。
もう外は夕方のようだ。
寂しい静けさの中にくうぅ、と腹の虫が鳴る。
咄嗟にお腹を押さえたが、聞こえてしまったようで男の子は顔を俯かせ、肩を少しだけ震わせていた。
「そういえばポケットの中に入っていたのだが」
男の子は片手を振り上げ、私に投げる動作をした。
弧を描き反射的にそれを取ろうと手を伸ばしたが、手に掠れることなく私のおでこにヒットした。
ぽとりと落ちたそれは私が牢獄で拾ったクッキーだった。
「それ、牢獄で拾ったんです……返すの忘れていました」
「……こんなもの牢獄で落とすと思うか。まぁ、いいだろう。腹が空いたのなら食べるといい」
私は手に持ったクッキーと男の子の顔を見比べた。
「……いえ、見た目は馴染みのあるものでも得体の知れないものであるのは確かです。知らない人からお菓子を貰うのはいけないことだと教えられました。……それに帰るまで我慢できます。なので、変な気遣いはしなくて結構です」
クッキーを押し返すと男の子はむすっとした顔をした。
「今日中に話が終わるとは限らない。……好意は素直に受け取れ」
「これは押し付けです。容疑がかかっているだけで手枷足枷つけて暗い牢獄に閉じ込めていたのに信用なりません」
そう言うと男の子は黙り込んでしまった。
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剣城京菜(プロフ) - あやべえさん» ありがとうございます!頑張ります!! (2018年8月25日 20時) (レス) id: 6021a386db (このIDを非表示/違反報告)
あやべえ(プロフ) - オロチかっこいいですぅ……これからも頑張ってください!応援しています! (2018年8月25日 9時) (レス) id: af2133f4e4 (このIDを非表示/違反報告)
剣城京菜(プロフ) - kkkkkkkkkさん» ありがとうございます!頑張ります!! (2018年8月7日 20時) (レス) id: 6021a386db (このIDを非表示/違反報告)
kkkkkkkkk - 頑張ってください!!応援しています!! (2018年8月7日 6時) (レス) id: c230d910a2 (このIDを非表示/違反報告)
剣城京菜(プロフ) - 奈乃さん» 頑張ります!!アドバイスもありがとうございます!! (2018年7月25日 11時) (レス) id: 6021a386db (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:剣城京菜 | 作成日時:2018年7月20日 19時