八十八輪 ページ38
「……やだなぁ、久しぶりに会ったからってそんなの酷いよ」
景君はにこにこと笑って私の側まで歩いてきた。
じっと真っ直ぐ目を見つめられる。
まるで矢が突き刺さるような。
「私の知ってる景君はそんなにも明るい子じゃない、今の私よりずっと大人しかった。自分のこと“僕“なんて呼んでなかったよ」
「……何年も経てば変わっちゃうんだよ。それとも昔の僕の方が好きだったから目をそらしてるの?」
景君は表情を変えず、声のトーンを落とした。
「……好きだったのは昔の話だよ。……そう、もしかしたら勘違いかも知れないね」
「わかればいいんだよ。さ、行こうよ」
景君はくるりと背を向ける。
「1つだけ、聞いてもいいかな。どうしてママを見て初めて会ったような口ぶりだったの?」
「えっ、それはー。昔だったから会ったこと忘れてたんだよ。向こうも忘れているかも知れないし……」
違和感は疑問となり、確信へ変わった。
「……あなたはあまりにも私のこと知らなさすぎる。あの人が私のママだって事実はない。それに本当のママにもあなたは会ったことない……っっ」
その瞬間、景君はこちらを振り返ると同時に私の両肩を掴んだ。
一瞬だけ見えた暗い目に今度は私が矢を突き刺すような視線を打った。
「感の鋭い餓鬼だ。……だけど嫌いじゃないよ」
悪魔のような微笑みで私を見つめる。
ふと視線を外される。
「昨日約束したよね?"2人"で遊ぼうってさ」
「……⁉」
突然肩を横に押し出され、私は尻もちをついた。
信号が赤になっているのがちらりと見えた。
トラックのブレーキ音が鼓膜を振動させる。
「いや……‼」
逃げようと足に力を入れたがどうにも間に合わない。
すると背後から強く体を押し出され、そのまま歩道に前のめりに倒れた。
背後から回った腕は強く私を抱きしめていた。
それはすぐに誰のものかは分かった。
「オロチ……」
顔をあげるとオロチは片手を私の後頭部にあて、自身の胸に押し当てた。
「……貴様一体何が目的だ」
オロチはぎろりと景君を睨みつけた。
「あーあ、すっごい過保護だなぁ。僕はAちゃんが欲しいだけなのに」
景君はくるりと回ってにこっと笑ってみせた。
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剣城京菜(プロフ) - まぃさん» ありがとうございます頑張りますっっ!! (2018年2月26日 18時) (レス) id: 6021a386db (このIDを非表示/違反報告)
まぃ(プロフ) - かっこいいですオロチ!! 夢主さんも可愛いし これからも頑張ってください! (2018年2月25日 21時) (レス) id: fa92bd9a65 (このIDを非表示/違反報告)
剣城京菜(プロフ) - 奈乃さん» ありがとうございます,頑張ります!! (2018年2月12日 11時) (レス) id: 8e91a3c5b3 (このIDを非表示/違反報告)
奈乃 - おもしろいです! 更新頑張ってください! (2018年2月11日 17時) (レス) id: e19d1310b2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:剣城京菜 | 作成日時:2018年2月11日 0時