八十二輪 ページ32
音浦景は,景君は目をぱちくりとさせるとにこっと笑った。
「良かった,思い出してくれたんだ」
「......うん」
昔,私は景君とは一番一緒にいた時間が長かった。
友だちというのも間違いではないものの,私は景君のことを......。
それから1時間位経っただろうか。
公園内で遊ぶのも飽きてきたらしく,別のところに行こうと提案された。
「あ,でも僕これから用事があるんだ。早く帰らないと怒られちゃうな」
「......景君いつまでいるの」
景君は人差し指を出した。
「あと明日だけ。明後日の朝にはこの街を出るよ」
景君は私の両手をぎゅっと握ると顔を覗き込んだ。
「明日も”2人で”遊ぼう」
「......分かった」
景君は更に手を強く握りしめてから手を離すと抱き着いた。
「急にごめんね,じゃあ明日楽しみにしてるね」
そういって景君は走って行ってしまった。
姿が見えなくなって私も家に帰ろうと振り返った瞬間,背後にいたオロチに気付かずぶつかってしまった。
「......ごめんなさい」
オロチは黙ったまま,私の顔を見つめた。
私の指先を握って,視線を私の後ろに送る。
何かあるのかと振り替えようとした途端,オロチは荒々しく腕を掴んで俵を担ぐように私を持ち上げた。
抵抗する前に空へ飛びあがり,私は心臓が飛び出る思いでオロチにしがみついた。
行き着いた先は私の部屋。
窓から中へ入るとオロチはベッドにおろした。
なにか変だ。
雑,というか。
「......音浦景は女ではなかったのか」
「......男の子だよ。私も気づく前は女の子だと思ってたけど......」
オロチは溜息をつくと背を向けた。
「......あ,の,オロチ。ごめんなさい......その,ごめんなさい......」
数秒してオロチは振り返る。
「......どうしたらいいか分からない。心というものは妖怪になっても複雑なのは変わらない」
オロチは右手で私の頭に触れた。
雑じゃない,優しい手。
「Aは何も悪くない......すまない」
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剣城京菜(プロフ) - まぃさん» ありがとうございます頑張りますっっ!! (2018年2月26日 18時) (レス) id: 6021a386db (このIDを非表示/違反報告)
まぃ(プロフ) - かっこいいですオロチ!! 夢主さんも可愛いし これからも頑張ってください! (2018年2月25日 21時) (レス) id: fa92bd9a65 (このIDを非表示/違反報告)
剣城京菜(プロフ) - 奈乃さん» ありがとうございます,頑張ります!! (2018年2月12日 11時) (レス) id: 8e91a3c5b3 (このIDを非表示/違反報告)
奈乃 - おもしろいです! 更新頑張ってください! (2018年2月11日 17時) (レス) id: e19d1310b2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:剣城京菜 | 作成日時:2018年2月11日 0時