八十輪 ページ30
音浦景。
その名前で記憶の中のある一人の人間と一致した。
会いたい会いたくないでいえば微妙なところだ。
「......思い出したのか」
部屋に戻るとオロチはそんなことを聞いてきた。
「まぁ,まだまともだったころの話だよ」
まともというニュアンスも違うような気はするがそれ以外の言葉は見つからなかった。
「......どうした。相当仲が良かったのだろう」
私があまりにもぼけっとしているからかオロチはまた私を心配しだしたようだ。
「......別に心配してる訳じゃないよ。全くという訳ではないけど......それより随分早かったけど何しに行ってたの」
「......ああ,土蜘蛛殿のところに行ってきた。やはり手がかりは掴めなかったが」
オロチは自分の手を見ては溜息をついた。
「そういえばさっき糸が引っ張られたの。もう今は引っ張られてないんだけど......オロチはそういうのなかったの」
「......いや,ないな」
なんとなく,浮かない表情をしているような気がした。
なにかあったのか聞くとオロチは誤魔化すように咳払いをした。
「......なにか隠してる?」
そう問うとぴくりと肩を動かした。
「大したことではない。......今後どうするか考えていただけだ」
「......そう」
ベッドに座って足をぷらぷらとさせているとオロチは息が漏れるほどの溜息をついた。
「昔は好きだったかもしれないけど,物事をいろいろ知ってしまったら本当に好きだったのかとか本気だったのかとか良く分からなくなった......。オロチはそういうのないの?」
「......本当に好きなものは覚えている。忘れてしまったのは大して強いものではなかったからだと私は思うが......だがAの言うのは”友”の話だろう」
友。
......と言えば間違いではないような。
「あ,う,うーん......?」
ぴんとこなくて体をひねるとぽてんとベッドに倒れた。
考え事がまた増えてしまった。
「奴となにかあったのか」
オロチはベッドに座ると私の頭を何度か軽く叩いた。
「......痛い」
傷跡が痛んだ。
苦しむほどではなかったが,確かに痛みを感じた。
「......治った」
すぐに痛みはひいた。
だがオロチは深刻そうに私を見ていた。
「......傷のこともなんとかしなければな」
また新たに厄介ごとが増えた。
これ以上増えなければいいのだが。
「治療薬があれば治るだろうか」
オロチはそういってまた妖魔界へ行ってしまった。
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剣城京菜(プロフ) - まぃさん» ありがとうございます頑張りますっっ!! (2018年2月26日 18時) (レス) id: 6021a386db (このIDを非表示/違反報告)
まぃ(プロフ) - かっこいいですオロチ!! 夢主さんも可愛いし これからも頑張ってください! (2018年2月25日 21時) (レス) id: fa92bd9a65 (このIDを非表示/違反報告)
剣城京菜(プロフ) - 奈乃さん» ありがとうございます,頑張ります!! (2018年2月12日 11時) (レス) id: 8e91a3c5b3 (このIDを非表示/違反報告)
奈乃 - おもしろいです! 更新頑張ってください! (2018年2月11日 17時) (レス) id: e19d1310b2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:剣城京菜 | 作成日時:2018年2月11日 0時