いつも君は80 ページ30
気づけばその上に赤いランドセルを背負った女の子がいた。
こちらに背を向けていて顔は見えないが、女の子はそこにぽつんと独りだった。
女の子はいつの間にか持っていた木の棒で地面に大きな円を描き始めた。
波紋は消えていくのに女の子の描くものだけは消えず、そこに留まり続けていた。
円の中に文字や記号をすらすらと描き、描き終えると木の棒を手放した。
陣の中に両膝をついて両手を組み合わせる。
『ーーー……』
すると暗闇の中にぽつんと黒い影が現れ、女の子を取り囲んだ。
女の子は立ち上がると目の前に居た人型の影に抱きついた。
人型の影は女の子の背に腕をまわし、大事そうに抱きしめた。
そしてすぐ女の子は人型の影から離れると、その温かそうな手を恥ずかしそうに握った。
「ーー……‼」
その小さな女の子が振り返ると、私は目を見開いた。
視線が交わりあうと、"私"は微笑んだ。
そしてその一瞬で"私"は顔を歪め、まるで溶けたアイスのようにどろどろに皮膚を溶かし消えていった。
残った人型の影が手をぶらんと垂らすと、突然雨がザアザアと振り始めた。
人型の影はただただ、そこに呆然と立ち尽くしていた。
雨に濡れ視界が溶けていく……。
「起きてってば‼」
そんな声が頭の中でぐわんぐわんと響いた。
はっと目を覚ますと彼女が見上げる状態で顔を覗き込んでいた。
「……もう帰る時間だよ？」
窓の外を見ると既に薄暗く空が染まっていた。
いつの間に眠っていたのだろうか。
「ねぇてば早く帰ろー」
「あ、うん。すぐ行くー。じゃあAも早く帰るんだよ？ばいばい」
彼女は慌てて教室を出ていった。
「……」
誰かは私を大事そうに抱きしめた。
私はその誰かを大事そうに抱きしめた。
その誰かは誰なのか、分からない。
だけど、それは私にとってどういう存在なのだろうか。
大切な人……なのだろうか。
そんなことを考えつつ下駄箱まで行くとザーザーと雨の降る音が聞こえた。
起きたときは一切降っていなかったはずだが、長時間降っていたかのように地面はぐちゃぐちゃに乱されていた。
天気予報では晴れと言っていたはずだがこれでは宛にならない。
ぼんやりと空を眺めていると誰かが肩を叩いた。
振り返ると委員長がそこに居た。
「……傘入ってく？」
そう言って委員長は黒の折り畳み傘を差し出した。
私はそれと空を交互に見た。
「……いい」
折り畳み傘を押し返して私は雨の中を駆け出した。
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剣城京菜(プロフ) - 美空さん» ありがとうございます！！頑張りますっ！！ (2017年12月28日 0時) (
レス) id: 269c9ce767 (このIDを非表示/違反報告)
美空 - 続きが気になります。ゆっくりでかまいませんので更新頑張ってください。楽しみにしてます！ (2017年12月27日 21時) (レス) id: 611dba761a (このIDを非表示/違反報告)
剣城京菜(プロフ) - 奈乃さん» ありがとうございます頑張りますっ！ (2017年12月4日 20時) (レス) id: 269c9ce767 (このIDを非表示/違反報告)
奈乃 - 更新頑張ってくださいね！ (2017年12月4日 18時) (レス) id: e19d1310b2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：剣城京菜 | 作成日時：2017年12月4日 0時
