いつも君は53 ページ3
あっという間にお粥を平らげた。
頭痛も治まっていたのでそれをキッチンへ持っていくことにした。
部屋の扉を開けるとリビングの方に明かりがついていた。
消しに行こうとすると、ソファに母さんが腰掛けているのが見えた。
私はそのままキッチンへはいり、流し台に洗い物を置いた。
水を出すと、母さんがこちらを振り向き
「Aちゃん」
と、私の名前を呼んだ。
一旦手を止め、私は顔をあげた。
「わざわざ持ってこなくて良かったのよ……」
母さんは私から顔をそらした。
「……そう、ごめんなさい」
どうすることも出来なくて、私は顔を俯かせた。
見本さえ知らない私はどう接するべきなのか分からなくて、溝が出来ても飛び越えることなくその場に立ち止まることしか出来なかった。
「……私、そんなに頼りないかしら」
母さんがぼそりと呟いた。
「元気の塊みたいな子だったのに、急に人が変わったかのように大人しい子になっちゃって……。聞いてもなにも答えないから私、なにも分からなくて……。でも、だからこそそれは私のせいなのね。気づけなかった私が悪いのよ。こんな頼りない私だからお父さんも離れてしまったのね。……あんなにうるさくしてしまっていたら起きてしまうわよね、本当にごめんなさいね……」
「……」
違った。
私は……一体なにを思っていたのだろう。
立ち止まっているべきではなかった。
溝を深くしたのは、そう思わせたのは単なる私の自己中心的な考え方だった。
顔を俯かせた母さんの手の甲に一粒の雫がこぼれ落ちたのを見て私は、こういう場合どうすればいいのか考えた。
でもやっぱりどう言えば正解なのか、分からなかった。
「本当に情けないわよね……っ」
母さんは服の袖で目元を擦った。
「あとは母さんがやるから部屋に行ってなさい」
母さんは私の背中を押して部屋の扉を開けた。
流されるままに私は部屋に入る。
振り返って見た母さんは笑っていた。
それは多分、悲しいと言われるものなのだろう。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 15人がお気に入り
お気に入り作者に追加
「オリジナル」関連の作品
この作品を含むプレイリスト ( リスト作成 )
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
剣城京菜(プロフ) - 美空さん» ありがとうございます！！頑張りますっ！！ (2017年12月28日 0時) (
レス) id: 269c9ce767 (このIDを非表示/違反報告)
美空 - 続きが気になります。ゆっくりでかまいませんので更新頑張ってください。楽しみにしてます！ (2017年12月27日 21時) (レス) id: 611dba761a (このIDを非表示/違反報告)
剣城京菜(プロフ) - 奈乃さん» ありがとうございます頑張りますっ！ (2017年12月4日 20時) (レス) id: 269c9ce767 (このIDを非表示/違反報告)
奈乃 - 更新頑張ってくださいね！ (2017年12月4日 18時) (レス) id: e19d1310b2 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：剣城京菜 | 作成日時：2017年12月4日 0時
