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「何度かは目を覚ますのよ〜。怪我ももう治ってるし動けない訳がないのだけれど」
私はオロチの肩を軽く揺らしてみた。
動く気配すらない。
こういうのはおかしいけれどまるで死んでいるようだ。
「オロチは悩んでたの?」
「えぇ、それはもう妖怪になってから何十年もずっとね〜……。Aちゃんだって分かってから更に悩んでいたみたいだわ〜」
なにも知らなかった。
私が傷ついていた数年よりもオロチはずっとずっと辛い思いをしていたっていうの……?
からん、と足元に何かが落ちた。
「コンパクト鏡……?いつの間に持ってたんだろう」
「……真実はAちゃんの味方をしてくれるみたいよ〜」
えんらえんらはそう言った。
そういえばエンマ大王が真実に導いてくれると言っていた。
「……わけわかんないよ。どうしていいかわかんない」
「真実がなければ答えにはたどり着けない……そういうことよ〜。Aちゃんは鏡の力ってなにか分かる?」
私は首を横にふった。
えんらえんらは身を寄せ、私の手に冷たい手を重ねた。
「答えは"真実を映す"よ〜」
えんらえんらは手を重ねたまま、そのコンパクト鏡を開いた。
「さ、Aちゃん。今Aちゃんは知りたいはずよ〜。それは一体なにかしら〜」
「知りたい、こと……」
鏡を見続けるとぼんやりと姿が変わる。
「……オロチ」
あの時のように、オロチは顔を俯かせていた。
すると突然鏡の中に吸い込まれるような感覚に襲われた。
「……?」
目を開けるとそこはグレーの世界。
「……オロチ?」
目の前に顔を俯かせ立つオロチが居た。
『……全ては私の責任だ』
ぼんやりとあたりの景色が変わる。
「……山の中。夜?」
空を見上げると点々と白いものが散らばっていた。
「あれは……人?」
茂みをかき分け山の中へ踏み込む人影が見えた。
姿は違えど私はそれが誰なのかはっきり分かった。
それは人間時代のオロチだ。
「あ……っ」
向こうには私が見えてないらしい。
オロチは足を滑らしころころと転がった。
「……赤い目」
足を滑らし転がった際、オロチは誤って祠を壊してしまった。
そこから起こったことは赤い目が話したことと同じだった。
でも……。
……故意ではなかった。
そんなの分かってる。
分かっていたのに……。
するとまた、吸い込まれるような感覚が私を襲った。
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剣城京菜(プロフ) - 奈乃さん» http://uranai.nosv.org/u.php/list/Take2241/ こちらのURLに飛んで貰えれば完結したものが全て入ってます!もしくは私の名前をタップかクリックして貰えれば見つかります! (2017年10月21日 23時) (レス) id: d8b1658e8e (このIDを非表示/違反報告)
奈乃 - どんな作品がありますか? 読んでみたいです! (2017年10月21日 23時) (レス) id: e19d1310b2 (このIDを非表示/違反報告)
剣城京菜(プロフ) - 奈乃さん» 楽しんで頂けて良かったです!残念ながらこの作品の続編を作る予定はありませんが現在投稿中の作品も過去作品もありますので良かったらそちらも読んで頂けると嬉しいです(^^) (2017年10月21日 18時) (レス) id: d8b1658e8e (このIDを非表示/違反報告)
奈乃 - 面白かったです!続編見たいです (2017年10月21日 18時) (レス) id: e19d1310b2 (このIDを非表示/違反報告)
剣城京菜(プロフ) - capeさん» ありがとうございます!今後も頑張りますっっ (2017年8月28日 17時) (レス) id: d8b1658e8e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:剣城京菜 | 作成日時:2017年8月2日 1時