百三十四 ページ34
12月上旬。
さくらニュータウンに初雪が降った。
と言ってもふわふわとほこりが落ちてくる程度で積もる様子はない。
今月に冬休みを控えた小学生は雪に浮かれながら家路を辿っていた。
「さ、寒い……」
浮かれる小学生とは違い、私はこの凍える寒さに身を縮みこませていた。
冬は苦手だった。
まだこれからもっと寒くなるのに現時点でこんな震えているとなると１月２月が不安になってくる。
オロチも冬は苦手なようで布団に潜り込んで学校へついて来ることも減ってしまった。
今日もオロチは居ない。
「ただいま」
早く会いたくて靴を脱ぐと私はとたとたと階段を駆け上がった。
部屋の扉を開けたと同時に部屋の窓が開いてオロチが中へ入ってきた。
「おかえり。出かけてたの？」
帰るや否やオロチはベッドに腰をかけてため息をつく。
「……どうしたの」
なんとなく変に思った私はオロチの顔を覗き込んだ。
オロチは無反応だった。
「ねぇねぇ……大丈夫……？」
オロチの手に触れた瞬間、私はその手をすぐさま離した。
とんでもなく熱い。
焦点が合わなくなり、ふらりとその場に倒れ込んだ。
「ねぇ、オロチ。オロチってば‼」
肩を揺らしても返事はない。
苦しそうに息をするだけ。
私はオロチの身体をずるずると引っ張って、ベッドに寝かせた。
ただの風邪だ。
そうであってほしかった。
あらゆる手で熱を冷まそうとしたけど肌に触れた途端氷は溶けてしまう。
それならなにか食べさせようとおかゆを作ってもオロチは頑なに拒んだ。
熱があがるばかり。
そもそも妖怪は風邪なんてひく？
そんなこと今はどうでもいい。
早く……早くどうにかしないと……。
オロチがいなくなってしまう。
そんな気がした。
「待ってて、今度は私が助けてあげる」
私は家を飛び出すと、そよ風ヒルズへと走った。
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奈乃 - 面白いですね。 はまります。 (2017年10月21日 21時) (
レス) id: e19d1310b2 (このIDを非表示/違反報告)
剣城京菜(プロフ) - ヒカリさん» ありがとうございます！頑張ります (2017年8月2日 1時) (レス) id: d8b1658e8e (このIDを非表示/違反報告)
ヒカリ - とっても面白かったです!更新頑張ってください! (2017年7月31日 16時) (レス) id: ec7a8320b4 (このIDを非表示/違反報告)
剣城京菜(プロフ) - 文連さん» ありがとうございます！！とっても長編になってしまうと思いますが最後まで読んで頂けたら嬉しいです(^^) (2017年6月12日 1時) (レス) id: d8b1658e8e (このIDを非表示/違反報告)
文連(プロフ) - 黒髪の子が誰なのか気になりますね。最初から見させていただいています。貴方の書くオロチはいつも可愛くて読んでいて楽しいです (2017年6月11日 17時) (レス) id: c16134aa36 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：剣城京菜 | 作成日時：2017年6月11日 15時
