百二十九 ページ29
お婆ちゃんは勢いに任せて私を階段へ向かって押した。
私は怯えることなく手を広げた。
オロチの腕が背中へまわろうとしたその時だった。
それとは違う手が後ろから私を抱きしめた。
なにが起こったのか分からなくて私はオロチの顔を見た。
そして私を抱きしめる腕に覚えがあることに気づいた。
「公彦……」
階段から見下ろし、お婆ちゃんはそう言った。
「……おじさん？」
降ろされて振り返るとやはりそれはおじさんだった。
おじさんは私の頭を撫でると、階段を登った。
「僕は１度たりともAちゃんを恨んだことなんてないよ。……母さん、もうなにも言わない。今から車で家まで送るから」
おじさんは抵抗するお婆ちゃんを無理やり階段からおろした。
「離して‼親の言うことが聞けないの⁉」
「……あぁ、もううるさいな‼いっつも母さんはそうだ‼そんなにも周りの目が大事か⁉出来損ないの俺にはちっとも目を向けてくれなかったくせになにが親孝行だよ‼」
おじさんが声を荒げて怒るのはこの時が初めてだった。
私は少しばかり本当におじさんなのか疑った。
「誰からも相手にされないからって昔のこと引っ張り出してこんな小さな子にまで手を出して恥ずかしくないのか⁉もう二度と顔を見せないでくれ‼」
口論をしながら２人は家を出ていってしまった。
少ししてエンジン音が遠のくと私はその場にへたり込んだ。
「A……」
オロチが隣に座って背中を擦った。
怖い？悲しい？
この感情が分からない。
もしかすると感情さえ感じてないのかもしれない。
ただ、私は今一人でなくて良かったと思っていた。
抱きつくとオロチは私を抱えて部屋へ向かった。
ベッドに降ろされると私はオロチに袖を捲くられた。
目に見える形として残った痛みをオロチはそっと手のひらで撫でた。
「……痛むか」
「くすぐったいだけ……こんなのすぐ治るよ」
オロチは納得のいかないような表情で私を見た。
「……何故私が居ない時ばかり狙ったんだ？あいつに私は見えないだろう？」
「うーん……本当たまたまだったと思うよ。オロチがいた時はだいたい部屋にいたし……」
オロチは私の腕をまた撫でる。
腕を振り払うと私は部屋を出た。
１階へ降りてとある部屋へ入る。
「ここは前に借りた部屋だな」
「……夏恋さんの部屋」
私は机においてある伏せられた額縁を立てた。
白に身を包んだ二人が幸せそうに笑っている。
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奈乃 - 面白いですね。 はまります。 (2017年10月21日 21時) (
レス) id: e19d1310b2 (このIDを非表示/違反報告)
剣城京菜(プロフ) - ヒカリさん» ありがとうございます！頑張ります (2017年8月2日 1時) (レス) id: d8b1658e8e (このIDを非表示/違反報告)
ヒカリ - とっても面白かったです!更新頑張ってください! (2017年7月31日 16時) (レス) id: ec7a8320b4 (このIDを非表示/違反報告)
剣城京菜(プロフ) - 文連さん» ありがとうございます！！とっても長編になってしまうと思いますが最後まで読んで頂けたら嬉しいです(^^) (2017年6月12日 1時) (レス) id: d8b1658e8e (このIDを非表示/違反報告)
文連(プロフ) - 黒髪の子が誰なのか気になりますね。最初から見させていただいています。貴方の書くオロチはいつも可愛くて読んでいて楽しいです (2017年6月11日 17時) (レス) id: c16134aa36 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：剣城京菜 | 作成日時：2017年6月11日 15時
