夜桜語り 2片【オロチ】

夜桜70 ページ20

今にもスキップをしそうな足取りで帰路についていた。

家が近づき、平然を繕い、歩き出した。


「……誰だろう」


家の前にキャリーバッグを持ったゴツい男の人が居た。

その男の人は私の気配に気づいたのかこちらを振り向いた。


「パパ……‼」


パパは目が点になる。


「ぅおお‼」


そして突然突進して私を抱き上げると体が潰れそうなほどに抱きしめた。


「ぐぇっ」


苦しくてじたばたしてもパパは私を離さなかった。

ふと上を見上げると部屋の窓からオロチがこちらを見ていた。

暫くしてようやく離して貰えるとパパは鼻水をだらだらと垂らしていた。


「うっわ、汚い」


そんな顔で抱きつこうとするので私は脇をすり抜け家の中へ入った。


「……」


私は扉を背に顔を俯かせた。

まだ昨夜のことでぐちゃぐちゃしていた。


「……A」


オロチが部屋から降りてくるとドアスコープを覗いた。


「……大丈夫なのか」


オロチはドアスコープを指差した。

何のことだとそれを覗き込むとドアスコープの前でパパが鼻水と涙を垂れ流して酷い顔だった。


「開けてくれよう〜っっ」


なんて言いながら扉を弱々しく叩いていた。

開けてくれと言われても鍵は開いてるし扉を押さえつけているわけでもない。

開けようと思えば開くのだ。

そういえばたまにとてつもなく面倒くさい人だったなと思い出した。


「勝手入ってこれば‼」


扉越しに叫んで私は部屋に行った。

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