五十八 ページ8
クッションに顔を埋めてぐずぐず泣き出しても、どこにも当てられないこのぐちゃぐちゃの感情さえどうしようもできない。
「……遠出して疲れたうえに重なれば不安定になるのも無理はない」
オロチは私の肩に触れようとした。
そしてすぐにその手を引っ込めた。
「……寝たくない」
「こちらが手を出せない以上無駄な事だが寝なければ体がもたないだろう」
じゃあどうすればいいの。
凄く眠たいのに眠れないなんて辛い。
「……少し待っていろ」
そう言ってオロチは部屋を出ていってしまった。
「……あれ」
ふと気づくと私はクッションを抱きかかえてあの積み木の街のど真ん中で眠っていた。
「ミぃーツけタァ」
女の子の声で目の前に現れたのはなんと、女の子の人形だった。
しかも片目のない私の大切なお人形。
そのお人形は街を覆い隠すほど大きくて、私を
指のない手で掴んだ。
目の高さまで持ち上げられ、その目は赤く光る。
「わ、ワ、私。A、だタダ、だヨ。ふ、ふフ、普通、の、ノ。女ノ子、ダよヨ。都合の良イ女の子、ダョ」
「離して……っっ」
私は足をジタバタさせた。
「都合ノ良い女ノ子」
「不幸ノ子」
モヤたちが口々にそう言って私を指差す。
「コロして……コこここ、コロして……」
「死にタそゥ」
「死にタガり」
人形は赤い目に私をうつした。
にっこり笑って、何処かへ向かう。
「オ墓、お墓。お前のこロした人間」
そう言って人形は洞窟の前に乱雑に落とした。
振り返ると人形は姿を消していた。
洞窟の奥からなにか低い音が反響して聞こえてくる。
この先に進むのは駄目な気がする。
早く起きなきゃ。
そう思うもどうすれば起きれるかなんて分からない。
試しに腕をつねったり頭を強く叩いてみたり痛みを与えてみたけれど、なにも変わりはしなかった。
途端、外は暗くなり土砂降りの雨。
ゴロゴロと雷が唸りぴかっと稲妻が現れ、近くに落雷した。
耳を塞いで咄嗟に走った。
音が遠くなって足を止めると私は洞窟の中にいた。
道が何本にも別れていて外に出る道も分からない。
松明があるものの中は冷たく暗い。
どうやら私はまんまとつられてしまったようで目の前にはいくつものお墓が建てられていた。
掘られた文字は読めるけれどどう見ても人の名前ではない。
「……日和家」
真ん中のお墓にはそう書かれていた。
私はそのお墓に2、3歩近づいた。
「パパ……ママ……」
その時だった。
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アミュレット - 今日も良かったです! (2017年5月18日 20時) (レス) id: f72bc11f9a (このIDを非表示/違反報告)
アミュレット - やっぱりオロチは、カッコイイですね(*^^*)主人公が危機にさらされた時には、必ず助けてくれる。私、オロチに惚れ直してしまいましたww (2017年5月15日 21時) (レス) id: f72bc11f9a (このIDを非表示/違反報告)
剣城京菜(プロフ) - アミュレットさん» ありがとうございます、頑張ります(^^) (2017年5月15日 7時) (レス) id: d8b1658e8e (このIDを非表示/違反報告)
アミュレット - あと、一話で六十話ですね!焦らずゆっくりでも大丈夫ですので、更新頑張って下さい(*^^*)応援しています! (2017年5月14日 15時) (レス) id: f72bc11f9a (このIDを非表示/違反報告)
剣城京菜(プロフ) - アミュレットさん» 今書きますのでもう少し待ってて下さいね(^^) (2017年5月13日 16時) (レス) id: d8b1658e8e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:剣城京菜 | 作成日時:2017年5月5日 18時