六十八 ページ18
「ねぇ、ママとパパみたいに笑ってよ、ねぇ。宝物みたいに大切に扱って。そしたら許してあげられるかも」
私は御札をちらつかせた。
それでもオロチは表情を一切変えない。
「……2度もなると罪悪感が少ないな」
その瞬間、右頬に激痛が走った。
それと同時に私は硬い地面に倒れ込んだ。
何が起こったんだと体を起こそうとするとオロチが覆いかぶさり、片手を私の首筋に触れるか触れないか程度のとこで止めた。
「私が甘すぎるだと?優しいだと?勘違いするな。私は必要とあれば誰だって構わず今のように拳を振る。それでも不満か?今欲しいのは甘さでもなく優しさでもなく実感のできる痛みだろう」
「前にも思ったけど、女の子に手あげるなんて最低。……でもそういうとこが優しいんだよ」
私は御札をびりびりに引き裂いた。
「……早く退いてよね」
私はオロチの右頬を殴ってそこから抜け出した。
「……私に殴られる必要性はあったか」
「ない。……でもお返しってことかも。罪悪感は
……ちょっと」
私は立ち上がって砂を払った。
『……』
石の中の私は無表情のままこちらを見つめた。
『……痛い。痛い痛い痛い。でも悪くない』
そう言うと石の中の私は白い濁りの中に消えていった。
それと同時に何かが崩れる音がした。
「道ができたな」
迷わずその方向へ歩くオロチを呼び止めた。
「その、オロチ。……いっぱい、ごめんね。酷いことしちゃった」
「……気にするな。Aの言う通り殴るのは少し問題があるのかもしれない」
オロチは殴った方の拳を見つめた。
「でもまた私がいけないことになったら殴るでしょ」
「問答無用だ。せいぜい舌を噛まぬよう歯を食いしばれ」
そう言ってオロチはその拳を私に突きつけた。
「そっか……、良かった。ぁ……変な意味じゃないよ」
「……ああ、分かっている。Aは至って普通だ。普通の人間としての感情を捉えただけだ。こんなとこで立ち止まっていないで先に進むぞ。本当に祓うべきものはまだあるんだ」
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アミュレット - 今日も良かったです! (2017年5月18日 20時) (レス) id: f72bc11f9a (このIDを非表示/違反報告)
アミュレット - やっぱりオロチは、カッコイイですね(*^^*)主人公が危機にさらされた時には、必ず助けてくれる。私、オロチに惚れ直してしまいましたww (2017年5月15日 21時) (レス) id: f72bc11f9a (このIDを非表示/違反報告)
剣城京菜(プロフ) - アミュレットさん» ありがとうございます、頑張ります(^^) (2017年5月15日 7時) (レス) id: d8b1658e8e (このIDを非表示/違反報告)
アミュレット - あと、一話で六十話ですね!焦らずゆっくりでも大丈夫ですので、更新頑張って下さい(*^^*)応援しています! (2017年5月14日 15時) (レス) id: f72bc11f9a (このIDを非表示/違反報告)
剣城京菜(プロフ) - アミュレットさん» 今書きますのでもう少し待ってて下さいね(^^) (2017年5月13日 16時) (レス) id: d8b1658e8e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:剣城京菜 | 作成日時:2017年5月5日 18時