六十五 ページ15
「そうね‼」
「ねっ‼」
ママとパパが向日葵を見て笑っているのを見て小さな私も笑っていた。
「公彦おじさんはまだ来ないのー?」
パパは悲しそうな顔で私の頭を撫でた。
すると遠くから誰かが呼ぶ声がした。
「おじさん‼」
小さな私は走り出した。
ママとパパは慌ててその後を追いかけた。
「Aちゃん元気にしてたかなー?」
「うん‼」
小さな私は頭を撫でられるとくすぐったく笑った。
「公彦、仕事は……」
「2日間だけ休みを貰ってきた。Aちゃんと約束したからね」
おじさんは小さな私を抱き上げると頬ずりをした。
「お髭痛い〜」
嫌だと言っても私は照れくさそうに笑っていた。
「それ、高い高ーい」
「きゃーっ」
『おじさんはすっごく優しかったよね?お仕事まで休んで会いに来てくれるんだから。大好きだったよね?……今もそうでしょ?』
全てが消え、白く濁った空間に鈍い光が差し込んだ。
見えた暗く暑い光景に私はたじろいだ。
「嫌……」
私はオロチの後ろに隠れた。
白の軽自動車が踏切の前の脇の道に止まった。
「嫌……っっ」
見たくない。
なのにこれから起こる出来事に私の視線は外せなかった。
「た、すけ、なきゃ……」
気づくと私は車の方に向かって走っていた。
「A……っ」
なりふり構わず私はママとパパの元へ走っていた。
エンジン音警報音電車の音が交わる。
オロチは後ろ衿を掴んで憤怒の顔で私を睨みつけていた。
「ぅ、うええん……」
駄目だった。
助けられなかった。
『もう、私たちは人ではなく化け物だった。……辛かったよね?あなたも気を失ってすぐに猛スピードで突っ込んで来た車に迫りくる電車。車は私たちの車に追突してその衝撃で踏切の中。知らない間にあなたは肉親を殺したんだもの』
「もうやめろ‼こんなの勝手なこじつけだ‼誰がどう見たってただの事故だろう‼」
オロチは姿も見えない私に怒鳴った。
姿のない私は声色を一切変えず淡々と話す。
『やめないよ、言ったでしょ。化け物話を語る上できちんと主人公の経緯と心情を整理しなきゃ。面白くなるのはこれからなんだからね?……それとどの物語の主人公っていい子ちゃんばかりだよね?でもそんなの面白くない。悪の心って誰にでもあるものだよ。そう、あなたにもね?だからきちんと物語を追って自身についてしっかり認識しなくちゃ』
また、白く濁って渦巻いて、渦巻いて。
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アミュレット - 今日も良かったです! (2017年5月18日 20時) (レス) id: f72bc11f9a (このIDを非表示/違反報告)
アミュレット - やっぱりオロチは、カッコイイですね(*^^*)主人公が危機にさらされた時には、必ず助けてくれる。私、オロチに惚れ直してしまいましたww (2017年5月15日 21時) (レス) id: f72bc11f9a (このIDを非表示/違反報告)
剣城京菜(プロフ) - アミュレットさん» ありがとうございます、頑張ります(^^) (2017年5月15日 7時) (レス) id: d8b1658e8e (このIDを非表示/違反報告)
アミュレット - あと、一話で六十話ですね!焦らずゆっくりでも大丈夫ですので、更新頑張って下さい(*^^*)応援しています! (2017年5月14日 15時) (レス) id: f72bc11f9a (このIDを非表示/違反報告)
剣城京菜(プロフ) - アミュレットさん» 今書きますのでもう少し待ってて下さいね(^^) (2017年5月13日 16時) (レス) id: d8b1658e8e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:剣城京菜 | 作成日時:2017年5月5日 18時