六十四 ページ14
「A」
名前を呼ばれ振り向いた。
気づくと拘束はとけていた。
オロチは廊下のその先を指差した。
何があるのかと私が廊下に出ようと足を踏み出した途端、全身に温かな風がなびいた。
オロチは廊下の先を指していた指を私に向けた。
数秒程してそれは私に向けたものではないと察した。
「ねんねしようね、Aちゃん」
振り返るとそこにはゆりかごを揺らすママがいた。
天井からは月と星と雲のモビールがくるくる回り、ゆりかごからむちむちした腕がそれに触りたいと伸ばしていた。
私はゆりかごが見える位置に近付いてそっとゆりかごの中を覗いた。
「随分大きいな」
オロチが私の後ろから覗き込んでそう言った。
「……うん、私産まれたときは他の子よりちょっと重たかったんだって」
赤ん坊の私はまだ手を伸ばしてモビールに触ろうとする。
「あーっ」
星が2つ、むしり取られた。
「Aちゃん、めっ‼」
ママは鼻をちょん、とつついて抱き上げた。
赤ん坊の私はなにも知らない顔で2つの星を握ってにこにこと笑っていた。
「ママ、Aちゃん寝た?」
「ううん、なかなか寝なくて……これも直さなきゃね」
ママが赤ん坊の私の手から星のモビールを取った。
「ぶーっ」
それが気に入らなかったのか赤ん坊の私はママの手を叩いた。
「あー、落ちちゃった……」
「僕が拾うよ。もうちょっと上に取り付けるようにしようか」
パパが星のモビールを拾い上げた。
「うーん、可愛いなぁ」
パパが赤ん坊の私の頬をつついてキスをする。
「あ、う〜」
赤ん坊の私はにこにこと笑って手足をじたばたさせた。
「この先も3人でずーっと幸せになろうね」
ママとパパは顔を見合わせると笑った。
『こんなにも愛されて産まれてきたんだよ?覚えてる?私たちは望まれて産まれてきた。それってとても嬉しいよね、そう思ったでしょ?』
また、白い煙が立ち込めた。
今度はじりじりと暑い。
蝉の鳴き声が聞こえた。
煙が薄れていくとあまりの眩しさに目を瞑った。
眩しさに慣れ目を開けると目の前に鮮やかな黄色の向日葵の顔があった。
大きな木のところから笑い声がする。
私は向日葵の間をぬって大きな木の所へ向かった。
「Aちゃん、美味しい?」
「うん‼」
確か私が5歳くらいのことだっただろうか。
「今年も綺麗にひまわりが咲いたな」
パパは向日葵畑を見てため息をついた。
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アミュレット - 今日も良かったです! (2017年5月18日 20時) (レス) id: f72bc11f9a (このIDを非表示/違反報告)
アミュレット - やっぱりオロチは、カッコイイですね(*^^*)主人公が危機にさらされた時には、必ず助けてくれる。私、オロチに惚れ直してしまいましたww (2017年5月15日 21時) (レス) id: f72bc11f9a (このIDを非表示/違反報告)
剣城京菜(プロフ) - アミュレットさん» ありがとうございます、頑張ります(^^) (2017年5月15日 7時) (レス) id: d8b1658e8e (このIDを非表示/違反報告)
アミュレット - あと、一話で六十話ですね!焦らずゆっくりでも大丈夫ですので、更新頑張って下さい(*^^*)応援しています! (2017年5月14日 15時) (レス) id: f72bc11f9a (このIDを非表示/違反報告)
剣城京菜(プロフ) - アミュレットさん» 今書きますのでもう少し待ってて下さいね(^^) (2017年5月13日 16時) (レス) id: d8b1658e8e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:剣城京菜 | 作成日時:2017年5月5日 18時