六十三 ページ13
オロチは髪を翻し壁を探り始めた。
「エッさ、ホイさ」
来た道からモヤが走ってこちらにやって来た。
私には見向きもしないでピッケルで白濁色の石を叩き始めた。
「こラーっ‼そノ石は触っテはいカンと言ッタだロー‼」
後からリーダーらしきモヤが走ってやって来た。
「ゥ、わあアァあ‼」
叫び声に振り返ると白濁色の石から白い大きな手が伸びてモヤを鷲掴みにしていた。
ずるずると引き込まれ、あっという間に石の中に入ってしまった。
「モ、もゥ、駄目だ……」
リーダーらしきモヤはそう言って全速力で走り去ってしまった。
「……どうした」
騒ぎに気づいたオロチがこちらへ駆け寄ってくる。
「……‼」
石からまた白い手がこちらへ伸び、私の体をそっと掴んだ。
白濁色の石は煙が巻くように中でぐるぐる周り、その中に見えたものに私ははっと息を飲んだ。
「わた、し……?」
白濁色の石の中に居たのは私だった。
無意識のうちに私は私と目を合わしていた。
産まれたままの姿の石の中の私はにっこりと笑う。
つられて口角が上がろうとしてひくついた。
「初めまして、でいいのかな?」
石の中の私はそう言った。
「私は違う私、私は同じ私。人生の中でうまれたもう一つの思考だよ。だから私も、私も同じ。……この言い方は紛らわしいかな。私はあなたのもう一つの思考ってこと。私とあなたは表裏一体、切っても切り離せない存在」
石の中の私はオロチと私の顔を見比べた。
「随分と仲良くなっちゃったね。あ、攻撃しても意味ないからね。私を殺すことはこの子の半身を殺すことと同意。用事が済んだら離してあげるから、聞いてね。じゃあ、ね。まずはここまでいきさつを整理してみよっか」
すると石から白い煙が溢れ出した。
地面から上に濁らせ、そしてあっという間にあたりは真っ白になった。
「どこ……」
音もないことに不安になり、私は辺りを見回した。
そうしたところで見えないのはわかっていた。
だけどなにもしないと無抵抗過ぎて余計に不安になると思えた。
やがて白い煙は薄れていく。
目の前に見えるものは鉱山の固いイメージのある岩の壁ではなく、心が落ち着くような畳の香りのする部屋だった。
そこは私の部屋になる部屋。
私の部屋になる前の部屋。
『違うよ、最初からここはあなたの部屋』
石の中の私の声がそう言った。
すると突然赤ん坊の泣き声が聞こえた。
その声はこちらへ近付いてくる。
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アミュレット - 今日も良かったです! (2017年5月18日 20時) (レス) id: f72bc11f9a (このIDを非表示/違反報告)
アミュレット - やっぱりオロチは、カッコイイですね(*^^*)主人公が危機にさらされた時には、必ず助けてくれる。私、オロチに惚れ直してしまいましたww (2017年5月15日 21時) (レス) id: f72bc11f9a (このIDを非表示/違反報告)
剣城京菜(プロフ) - アミュレットさん» ありがとうございます、頑張ります(^^) (2017年5月15日 7時) (レス) id: d8b1658e8e (このIDを非表示/違反報告)
アミュレット - あと、一話で六十話ですね!焦らずゆっくりでも大丈夫ですので、更新頑張って下さい(*^^*)応援しています! (2017年5月14日 15時) (レス) id: f72bc11f9a (このIDを非表示/違反報告)
剣城京菜(プロフ) - アミュレットさん» 今書きますのでもう少し待ってて下さいね(^^) (2017年5月13日 16時) (レス) id: d8b1658e8e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:剣城京菜 | 作成日時:2017年5月5日 18時