四十二 ページ42
「本当に何もないな」
「だから行ったじゃん。本当に何もないよって……」
山をおり、私とオロチは田んぼ道を歩いていた。
「大体自給自足で賄えるからお店は電車ないといけない……。でもあっちに駄菓子屋さんあるよ……。えっと、あっちの林通り抜けるとひまわり畑があって……」
思い出しながらあっちそっちと指を指し、道を案内する。
「随分と嬉しそうだな」
「……そう?」
オロチは道の真ん中で立ち止まった。
涼しい風が素直に吹きかかる。
「……もう帰ろ。夕方になっちゃう」
ここには私とオロチ以外の者が数人?いや、数匹いた。
それらはオロチがいるからか、はたまた見通しのいい場所にいるからかある距離以上近寄っては来なかった。
「ねぇ……帰ろうよ……」
私がそう言うとオロチは
「いや、そのひまわり畑とやらを見に行こう」
と言ってすたすたとひまわり畑の方へ歩いていってしまった。
「えぇ……?」
田んぼから見つめてくる目に怯え、私は仕方なくオロチの後を追いかけた。
「随分と気にかけていたようだったが」
「……なにが?」
オロチについていって林に入り、奥へ奥へと進んでいった。
少しして、薄オレンジ色の光が見えた。
「……まだ咲いていないのか」
「あとひと息ってとこ……かな…?時期的には8月だからあと一週間もすればいっぱい咲くと思う」
残念なことにひまわり畑は綺麗に咲いてはいなかった。
枯れていたとかではなく、時期が早すぎたのだ。
ところどころ咲いているものもあるけれど夕方が近いのでひまわりの首は俯いてしまっている。
「全て咲いたら綺麗だろうな」
「……オロチってそう言うこと言うんだ」
するとオロチはムッとした顔でこちらを見た。
「ひまわりが満開の時期になるとね、すぐそこの大きな樹の下でピクニックするの。でも、もう3年もしてない……」
「……満開になればまたこればいい」
そんな簡単にいうれけど……。
「無理だよ、すぐ帰っちゃうし……。遠いから日帰りで行けるとこじゃない」
「なら私が連れて行ってやろう。私なら電車とやらよりはやいぞ」
まさか担いでいくつもり?
それこそ無理ってものだろう。
でもオロチはそのつもりらしい。
そんな顔……しないで。
直視なんてできない。
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剣城京菜(プロフ) - 浅葱さん» ありがとうございます頑張ります(^^) (2017年5月1日 9時) (レス) id: d8b1658e8e (このIDを非表示/違反報告)
浅葱 - 不器用な感じが良いです更新頑張って下さい (2017年4月30日 23時) (レス) id: c9c24569e0 (このIDを非表示/違反報告)
剣城京菜(プロフ) - シオン!!さん» ありがとうございます頑張ります!! (2017年4月10日 16時) (レス) id: d8b1658e8e (このIDを非表示/違反報告)
シオン!! - 頑張ってくださいね! (2017年4月9日 2時) (レス) id: 4af10f54a6 (このIDを非表示/違反報告)
剣城京菜(プロフ) - *gami*さん» ありがとうございます!!頑張ります(^^) (2017年4月6日 0時) (レス) id: d8b1658e8e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:剣城京菜 | 作成日時:2017年4月4日 19時