祓うべきもの壱【オロチ】 (ページ35)

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「あー、電車来てる‼早く‼」

ホームの階段を降りていると乗る電車が来てしまい、公彦おじさんが焦りだす。

私も慌てて走った。

「はー、間に合った」

ぎりぎり駆け込んでなんとか電車に乗ることが出来た。

指定席なのでそこへ座った。

数分後、隣りでは寝息が聞こえる。

見た目とは裏腹に女の子みたいな可愛い寝息だった。

「どのくらいで着くんだ」

オロチが話しかけるので、私は周りを見回して誰も居ないことを確認して小声で答える。

「2時間くらいかな……」

オロチはうんざりしたような顔をした。

「すっごい田舎だよ。駅着いてずっと田んぼが続いてる。バスなんて滅多にないから30分くらい山を歩くの」

オロチなら簡単にいけるんだろうなぁと窓の外を見る。

「病院とか遠いし不便だけど住み心地はあっちのほうがいいと思う……」

ぼんやりと景色ばかり見て時間を過ごした。

乗り換えしてようやく駅につくとあたり一面畑だらけ。

「あともうちょっとだからね、頑張ろう」

公彦おじさんは疲れからか少し老けた気がする。

私も少し疲れた。

「こんにちは」

畑を耕している老夫婦に挨拶をして、私も合わせて会釈をする。

老夫婦は汗を流しながらニッコリと笑った。

オロチはずっとうんざり顔でわざわざ歩いてついてくる。

待つのとか苦手なのだろうか。

だったら留守番していれば良かったのに。

山道へ入る所にぼろぼろの木の立て札がある。

雨風にさらされ文字もかすれているし、土からは抜かれ倒れ立て札というのも可笑しい。

「その立て札ってなんて書いてあるんだろうね」

私がじっとそれを見ていたので公彦おじさんが言った。

「何十年も昔からあるみたいだよ。こんなとこにあるんだから日和家の物なんだろうけど昔の字って達筆過ぎて分からないよね」

「……うん」

読めないけど、一文字だけ何となく"安"と書いてあるのは分かった。

公彦おじさんがまたあるき出し、私も続いて歩いていく。

「……オロチ？」

振り返るとオロチはさっきの立て札を眉を潜めながらじっと見つめていた。

「……あぁ、なんでもない」