祓うべきもの壱【オロチ】 (ページ32)

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三十二ページ32

「そんな怯えるな。今回は派手な危害を加えるつもりではない。これは貴様を思ってのことだ。馴れ合い過ぎると後悔するぞ」

赤い目はにたりと笑う。

「あの幼子……随分変だとは思わないか？"妖怪"のくせに人である貴様を守るだと？何故そう簡単に言える？」

赤い目は私の前にしゃがむと顎を持ち上げ、目と目が合う。

「他人を簡単に信じるのは滑稽だ。そうだろう？」

「……あなたよりはまし」

言い返すと赤い目は吹き出した。

「そうかそうか‼だがな、奴は我より陰湿だ。我はなんでも知っている。……聞きたいか？奴が貴様にかけた"呪い"を……」

赤い目はそうやって耳元で囁いた。

気持ち悪くて私は赤い目を突き飛ばした。

「勘違いしないでもらいたい、私は忠告しにきてやったのだ。あの幼子には近づくべきじゃない。だが我の忠告はもっと聞かぬだろうな。その呪い、広範囲に根を生やさしてもらったぞ」

そう言うと赤い目はすっと姿を消した。

しんと静まり返る宇宙空間。

すると突然、足元からピシッとひび割れる音がした。

崩れ始めたこの空間からあっという間に落っこちた。

「……っっ‼」

気づくと私は自分の部屋のベッドの上にいた。

「……大丈夫か」

オロチが声をかけた。

「……うん」

今のは……夢？

でも夢にしては嫌にハッキリと覚えていた。

「……？」

擦った腕に違和感を覚えた。

袖のボタンを外し、袖を捲る。

腕には黒くつるのようなものがまとわりついていた。

あの赤い目が言っていたことを思い出した。

「なんなんだこれは……」

オロチが私の腕に触れた瞬間、体中に締め付けられる痛みが走った。

思わずオロチの腕を強く振り払う。

一瞬オロチは怒ったような顔をしたが、私の様子を見てなにか異変が起きたのだと悟ったらしい。

「……ごめんなさい」

私が謝るとオロチは眉をひそめ首を横にふった。

「……多分、全身にあるんだと思う」

靴下を脱いでみせると、予想通り足にまでそのつるのようなものが交差するように巻き付いていた。

入れ墨みたいで不快だった。

「夢で赤い目がその呪いを根を生やしたとかって言ってた。多分元々この呪いの種のようなものがあったんだと思う」

私はオロチに先程起こったことを話した。

「ねぇ、嘘つきってなに？」

そう言うとオロチは顔を伏せてしまった。

「そう、私には言えないんだ。……別に責めてない。オロチの個人的なことには私は関係ないもん」