二十九 ページ29
言葉数は少なく、セミの声が空気を読まず暑さを増させる。
「……そういえば捕らえられてから私はずっとAのことを見ていたのだが」
「……あっ、あああ。あれ、は、その。嘘というか」
露骨なほどまでに焦りを見せたがオロチはなんともない顔で、寧ろ焦る私を不思議な顔をして見ていた。
「Aの声は小さくてほとんど聞き取れていないからな。私が聞きたかったのはどうして私ではないと分かったのかということだったんだが……」
余計な焦りだったらしい。
「……頭撫でてもらったとき。だって、オロチくしゃくしゃに撫でたから」
「……そうか。……優しい方が良かったか」
私は首を横にふった。
するとオロチはくすりと笑った。
「オロチのこと信じたい。でもね、人間の考えを変えることってそう簡単にはできないと思う。だから、私はまだオロチのこと信じれない。死にたくないって思うのは認めるけど私は死なないといけないの。……オロチのこと、警戒もする」
「……分かっている。だがいくら時間を使おうがAが不幸でなくなるのなら私は喜んで助けとなろう。……少しでいい。ほんの指先でも触れてくれるのなら私はAを守ろう」
そう言ってオロチは私に小指を差し出した。
迷って私は小指の指の腹をオロチの小指にちょこんと触れた。
オロチはちょこんと触れた指に強引に絡める。
「は、離してってば‼」
ぶんぶんと振り回すも力は強く振り払うことはできなかった。
その信じたい金色の瞳はきらりと輝いていて、私を困惑させる。
少しだけなら、いいのかなぁ。
それから私たちは言えることを伝えあった。
私からは両親を死なせたこと、パパの弟の公彦おじさんとそのお嫁さんの夏恋さんに引き取られたこと、一緒に住み始めてすぐ夏恋さんが小学校のお迎えの途中事故で亡くなったこと。
夏恋さんの母親を始め、何人かの親戚が私を疫病神と吐き捨てたこと。
公彦おじさんだけは私の味方をして一人で私を守ると親戚との縁を切ってしまったこと。
オロチはそれらは私のせいではないと言った。
でも、それなら私は誰から責められればいい?
「額の目はAの望みでそうなった訳ではないのだろう。なら不可抗力だ」
「そんな簡単に私のせいじゃなかった、良かったね。なんて思えたらこんなことになってないよ。……私がもっと早くに危険なものだったって気づくべきだった」
するとオロチは緩く三つ編みに結った髪に触れた。
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剣城京菜(プロフ) - 浅葱さん» ありがとうございます頑張ります(^^) (2017年5月1日 9時) (レス) id: d8b1658e8e (このIDを非表示/違反報告)
浅葱 - 不器用な感じが良いです更新頑張って下さい (2017年4月30日 23時) (レス) id: c9c24569e0 (このIDを非表示/違反報告)
剣城京菜(プロフ) - シオン!!さん» ありがとうございます頑張ります!! (2017年4月10日 16時) (レス) id: d8b1658e8e (このIDを非表示/違反報告)
シオン!! - 頑張ってくださいね! (2017年4月9日 2時) (レス) id: 4af10f54a6 (このIDを非表示/違反報告)
剣城京菜(プロフ) - *gami*さん» ありがとうございます!!頑張ります(^^) (2017年4月6日 0時) (レス) id: d8b1658e8e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:剣城京菜 | 作成日時:2017年4月4日 19時