二十八 ページ28
「そうではない。まだ重要なことを隠しておる。その小僧はーー……」
その時だった。
「やめろ‼」
劈くような声。
「安心しろ、まだその時ではない。いずれ真実が不幸へ導くであろう。今回はこの辺にしておいてやる。我はいつでも貴様らを見ているぞ……」
赤い目はまるで陽炎のように消えていった。
「ねぇ、オロチ……オロチってば……」
私はオロチの肩を揺さぶった。
ふらつきながら立とうとするオロチに肩を貸した。
体を引きずりながら私たちは校舎内へ向かった。
夜よりも深い夜は、揺れ動きながら消えていく。
扉を閉めるとオロチの体はずるりとおちた。
「悪かったな」
オロチは痛そうな体を鞭打って自力で立ち上がる。
「……無理だよ」
ふらりと何処かに行こうとするオロチ。
私はそんなオロチを見ていられず無理矢理に脇腹に手を突っ込んでオロチの左腕を自分の首後ろへ回してしっかりと固定した。
「……帰えるの」
肩を貸しながら私は家に帰った。
オロチをベッドへ寝かしようやく一息ついた。
「……ごめんなさい」
私は眠るオロチに呟いて部屋を出ようと立ち上がろうとした。
するとオロチが私の手を掴んだ。
「あの、待ってて」
そっと手をベッドの上に置いて私は急いで部屋を出た。
部屋へ戻るとオロチは体を起こして私に視線を向けた。
「……ごめんなさい」
私はタオルでオロチの体を拭いた。
「……謝るのは私の方だ。Aに嘘をついたうえに辛い思いをさせてしまった」
「……別に、慣れっこだから。それにすぐに気付かなかった私が悪い……と思う」
話しながら治療を続ける。
傷の深さもまばらで見ていて痛々しかった。
「ねぇ……叶えられないってどういうこと?私を殺すことなの……?」
オロチは首を縦に振った。
「……そっか、私と同じ。私、あいつに言われて思った。私は自ら死ぬことは望んでいないって。私が死ぬのは望まれるからだって……。結局なにが正しいのかな」
「……正しいかなんて1つに決まっていることではないだろう。今回のことは私はAを知らなさ過ぎた。Aも私を知らなさ過ぎた。ただそれだけのことだ」
知らなさ過ぎた。
そんな簡単な言葉で片付けられてしまう。
本当に単純なことだった。
叶えられない、望んでいないという単純な答えから導き出されるもの。
それが嘘か本当か。
「……オロチのこと、知りたいよ」
「……私もだ」
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剣城京菜(プロフ) - 浅葱さん» ありがとうございます頑張ります(^^) (2017年5月1日 9時) (レス) id: d8b1658e8e (このIDを非表示/違反報告)
浅葱 - 不器用な感じが良いです更新頑張って下さい (2017年4月30日 23時) (レス) id: c9c24569e0 (このIDを非表示/違反報告)
剣城京菜(プロフ) - シオン!!さん» ありがとうございます頑張ります!! (2017年4月10日 16時) (レス) id: d8b1658e8e (このIDを非表示/違反報告)
シオン!! - 頑張ってくださいね! (2017年4月9日 2時) (レス) id: 4af10f54a6 (このIDを非表示/違反報告)
剣城京菜(プロフ) - *gami*さん» ありがとうございます!!頑張ります(^^) (2017年4月6日 0時) (レス) id: d8b1658e8e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:剣城京菜 | 作成日時:2017年4月4日 19時