二十五 ページ25
物音がすれば窓から外の様子を伺う。
そうやって時間が過ぎていく。
誰かが私を傷つけても逃げて私は待った。
次の日の午後10時頃。
「……‼」
ふと私は誰かの気配を感じて部屋を飛び出した。
扉の先に、誰かが……誰かがいる。
それは、きっとー……。
「オロチ……っっ‼」
扉を勢い良く開けた。
息が止まるほどに抱きしめた。
「ぁ、ごめんなさい……」
ふと我に返って3歩ほど後ろへ下がった。
オロチはぼろぼろの姿だった。
「あの、部屋いこ……」
オロチはふらりふらりと部屋へ戻っていった。
体の何処かが痛い。
私はタオルを持って部屋へ向かった。
「その、これで拭いて」
タオルを渡すとオロチはそれで体を拭き始めた。
「あの、ね。オロチ……ごめんなさい……」
私はベッドの上で足を抱え込んだ。
「私ね、正直少し嬉しいって思った……。私を見てくれて嬉しかった。オロチは私を殺さないって言ったけど本当なら……どうなのかなって……。でも、また傷つけちゃった……。本当にごめんなさい……。あの、こっち来てもらっても、いいかな……」
オロチは私に向かい合って座った。
「私ね、ずっと寂しかったの。悲しかった。大切な人、私のせいで死んじゃったから……。もし私が化け物じゃなかったらもっと私は妖怪を受け入れられたのかな?オロチとも、もっと近くにいられたのかな……」
オロチはずっと黙ったままで私を見つめていた。
「最期にね……お願い。頭撫でて……下さい」
私は精一杯に声を振り絞った。
するとオロチは優しく髪の流れに沿い撫でた。
「……ん、もう大丈夫」
私は部屋の電気を消すと深呼吸をして目を閉じた。
「……お願い」
ベッドが軋む音がすると、首に手の感触がした。
ああ、逃げられない。
逃げられないよ。
これでいい。
意外と呆気なかった。
力の入るその手に触れた。
異様に冷たくて、とても……。
やっぱりオロチだって願っていたのだ。
「お、ろち……好き……だよ……」
苦しくて、痛くて辛くて。
あれ、私……。
オロチは今どんな顔をしている?
嬉しい?
私は最期にオロチの顔を見たいと目をそっと開けた。
窓から差し込む月の光にオロチの赤い目が光った。
理科室で見たときと同じ……色?
「……ちが、う‼」
赤い目はにやりと笑う。
私は足で赤い目を蹴ったがひらりと避けられた。
「げほ……っ‼あなた……は……一体……‼」
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剣城京菜(プロフ) - 浅葱さん» ありがとうございます頑張ります(^^) (2017年5月1日 9時) (レス) id: d8b1658e8e (このIDを非表示/違反報告)
浅葱 - 不器用な感じが良いです更新頑張って下さい (2017年4月30日 23時) (レス) id: c9c24569e0 (このIDを非表示/違反報告)
剣城京菜(プロフ) - シオン!!さん» ありがとうございます頑張ります!! (2017年4月10日 16時) (レス) id: d8b1658e8e (このIDを非表示/違反報告)
シオン!! - 頑張ってくださいね! (2017年4月9日 2時) (レス) id: 4af10f54a6 (このIDを非表示/違反報告)
剣城京菜(プロフ) - *gami*さん» ありがとうございます!!頑張ります(^^) (2017年4月6日 0時) (レス) id: d8b1658e8e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:剣城京菜 | 作成日時:2017年4月4日 19時