祓うべきもの壱【オロチ】 (ページ24)

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二十四ページ24

私は扉を押し出してみた。

とても重たいけれど、確かに開いた。

「おっと、哀れな不幸の子よ。勝手に出ては困るぞ。元の世界へ戻れなくなるぞ」

「……なにが望みだ」

すると赤い目はふふっと笑った。

「人の不幸をみる。それが私の望みだ。生き甲斐とでも言おうか」

そして赤い目は低く落ち着いた声でこういった。

『醜ﾆｸｷ哀ﾚﾅ不幸ﾉ子ﾖ

呪ｲﾆ導ｶﾚｼ二ﾂﾉ幼子ﾖ

ｵ前ﾗﾉ運命ﾊ右ﾍ左ﾍ

一ﾂﾉ幼子ﾊ鳥籠ﾉ中

ｻｽﾚﾊﾞ扉ﾊ開ｶﾚﾙ』

それは覚えのある文だった。

「助かりたくばこれ一択。貴様ら幼子のどちらかが鳥籠に入れば扉は開かれる。……どちらかは貴様らで考えると良い」

そう言うと赤い目は風とともに消えてしまった。

オロチはこちらを振り返ると扉を開け、私の腕を強引に引っ張った。

「オロチが入るの……？」

「……最善の策だろう」

私は扉を開けようと鉄格子に手をかけた瞬間、ガチャリと音がした。

「南京錠……？」

がちゃがちゃと動かしてみてもぴくりともしない。

「悪あがきが過ぎるぞ不幸の子よ」

どこからか赤い目の声が聞こえる。

火の玉が幾つか乱雑に置かれ、激しく燃えきったと思ったら先程の化け物が現れた。

じりじりとこちらへ近づいてくる。

「A、今なら元の世界へ戻れる……早く逃げろ」

「で、でもオロチは……っっ‼」

するとオロチは薄っすらと笑い、私の頭をぐしゃぐしゃと撫でた。

「私がこのままやられると思うか？すぐに奴らの目を掻い潜って抜け出してみせる。……だから待っていてくれ。約束は守る。私を信じろ」

「ぁ……わ、たし……」

こみ上げてくる何かを私は押さえ込んだ。

足は一歩、二歩と下がる。

「あ、の…、ご、ごめんなさい……」

私はまともに顔を見れないまま、オロチに背を向けていた。

「……それでいい」

私は走った。

頭の中が真っ白で無我夢中になって走る。

下駄箱が見え、私はガラス扉を開いた。

熱風で頭がぐらりとする。

目を開けたとき、私はガラス扉の前で寝そべっていた。

「こんなところでどうしたんだい」

「先生……」

私は重たい体を起こした。

「立てるかい」

そう言って手を差し伸べられたけど自力で立ち上がった。

「転んだだけなので……その、さよなら」

私は靴を履いて走って学校を出た。

家に帰ってお風呂へ入った。

何故かあれから時間が経っていないようだった。

考え込んでもなにも変わらない。