祓うべきもの壱【オロチ】 (ページ22)

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二十二ページ22

「……私はお前を殺さない。根拠はある。私はお前を憎んだりしていないからだ。殺すことに快楽を覚えたことだってない。……すぐに信じろとは言わないが訳の分からない状況のまま得体のしれないものに殺されて終わりなど後味が悪いだろう」

なんと言われても時が経っても変わらない。

死ななくてはならないのだ。

でも……。

「でも、それでも一度約束したことだから……。信じられないから……。でも、でも。オロチを巻き込んでしまうのなら……私は、きっとここにいるべきじゃない……」

ここにいて無関係のオロチが私に干渉して傷つくというなら。

たとえ妖怪だとしても、私は……。

「ここから抜け出す……それで、私を殺すのはオロチだけ。オロチだけ私を殺すの。適当な所で死んでしまったらまた、私は死んでも悔やむことになる……と思う。だから……それで、いい？」

オロチはこの上ないほど雑に私の頭を撫でくりまわした。

「……今はそれでいい」

表情は見えないけれどきっとオロチは笑っている？

「……なにをしているんだ」

「靴下脱いだんだけど……」

ハイソックスを脱ぐとそれを体操着袋に突っ込んだ。

「だって、これじゃ走りにくいから……」

「私が運んでやるから必要ないだろう。それともし怪我をしたらどうするんだ」

私は少しむっとした。

「さっき私のこと落っことしたよね」

ぷいっとそっぽを向いた。

「あ、あれは重かっただけだ」

「……最低」

オロチは小声でしまったと言った。

「もういい。あと、さっきからちょっと近いしあんまりこっちみないで。不幸になったりするかも、だから。一応やめて」

そう言うとオロチはため息をついた。

「問題があるのは額の目だろう。元からあるものは普通だ。目を合わせることくらいしてもいいだろう」

そっぽを向いていた私の両頬を手で挟み、無理矢理に顔を自分の方へ向けた。

私は目をぎゅっと閉じた。

「目を瞑るな。顔が大変なことになっているぞ」

私は慌てて目を開けた。

そして一番に目に入ったのはオロチだった。

月の光があたり、青白く見えた。

濃い色の髪を水色のゴムでくくっていて。

切れ長の綺麗な目。

中はびっくりする程綺麗な金色に輝いていた。

「綺麗」

なんて、無意識にそう言った。

「な、なんでもない……」

なんだか熱くなって、慌てて顔をそらした。

私は一体、なにを考えているのだろう。

そんなことある訳ないのに。