祓うべきもの壱【オロチ】 (ページ16)

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十六ページ16

「……痛みは感じるのか」

「……ない」

オロチはまじまじとそのほくろの様なものを見ていたが

「早く服を着ろ。風邪引くぞ」

と、そっぽを向いた。

「タオルひん剥いたのオロチじゃん……」

ぶつぶつ文句を言いつつパジャマを着た。

髪を緩く三つ編みにしてもう寝るだけ。

……と言っても眠れるはずがない。

夏休みの宿題も早く終わらせたいので私はまた冊子を机に開いた。

「……ねぇ、オロチは人探ししなくていいの」

後ろからずっと覗き込んでいるオロチ。

「あぁ、そうだな」

と言っても探す気配は見られない。

「……ねぇ、私も手伝ってあげる。そしたら早く死ねる……凄く効率がいい」

オロチは困った顔でため息をついた。

「お前には無理だ」

「どうして。オロチより私の方が詳しいかもしれない」

そう言ったのにオロチは渋った。

やっぱり嘘なのだろうか。

「……別に構わないが手がかりがなにもない」

「……じゃあなんでオロチは探しているの？」

するとオロチはひょいと離れたかと思うと私のベッドの上にあぐらをかいて座った。

「詳しい事情は言えん。だが私の過ちのせいで不幸にした人間がいる」

「……なのに手がかりはないの？」

オロチは小さく頷いた。

「……会えば多分わかるだろう」

「……適当」

本当のことなら当分無理だろう。

聞いて損した。

次の朝起きるとオロチの姿は無かった。

朝食をとって宿題をして、お昼になって大切なことを思い出した。

学校にまだ置きっぱなしにしていたものがあった。

それは体操服。

大掃除の時に使ってそのまま忘れていた。

そう言えば今日はプールの日だったっけ。

さくら第一小学校の児童が沢山集まる。

避けたかったけど早く洗濯しないと大変なことになる。

中にいても外にいても同じ。

多分そう簡単にバレないだろう。

私は家を飛び出した。

「……変なの」

家を出て数分、何故か私は小学校の前まで来ていた。

人通りのない道を選んでいるものの妖怪と出会うことは毎日の事だったのに何故だが居ない。

「あっ、Aちゃん」

ふと名前を呼ばれ振り返ると同じクラスの木霊さんと山口さんがいた。

「ぇ……あ、いや……忘れ物取りに……すぐ帰らないと……」

私は急いで校舎内に入った。

「わっ……た……っ‼」

上履きなどないので靴を脱いであがろうとしたら靴下のせいで床で見事に滑って尻もちをついてしまった。