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消えかけた記憶から必要なものを手繰り寄せる。
「あ、また居る」
「また来たな」
毎回私たちはそう言い合う。
「ねぇねぇ、お兄ちゃんは1人なの?」
オロチは小さく頷いた。
「……そっか、私と同じだね。私もね、1人になったの。……私ここに来たばかりではしゃぎ過ぎたんだと思う」
「……今は1人ではないだろう」
オロチはそんなことを言っていた。
「明日もいる?」
「明日も来るのか」
そう言って私たちは別れを告げる。
くるたびにオロチは私といろいろ話をしてくれた。
当時は名前も知らなくてへんてこな格好をした優しいお兄ちゃんだと思っていた。
ある時オロチは私に紐のついたガラス玉を貰った。
いつでも会えるようにと言っていた。
小さな私には理解はできなかった。
「ねぇ、私変なの……?」
「何故そんなことを言う」
「私たまにね、変なの見えるの。人じゃなくてこーんなちっちゃいのとか、お家よりおっきいへんてこなの。皆見えないんだって。それで私嘘つきなんだって」
あの時、私は相当に傷ついていた。
「もうやだよぅ……」
変なのが見えるのも私が1人になった原因で、私はもうその時にはその変なのが大嫌いになってしまっていた。
「お兄ちゃんは違うよね……?裏切られるのもう嫌だよぅ……」
泣きつくとオロチは頭を撫でてくれた。
それは縋っても言いと言うように。
だけどそれは……嘘だった。
「"1人"でなにしてるの?」
たまたま通りすがったクラスメイトがそう私たちに言った。
「1人……?」
見上げるとオロチの瞳はとても深く鈍く光った。
「……嘘つき」
私は捨てた。
逃げ出した。
またダメだったんだって。
やっぱり私じゃダメだった。
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詩帆(プロフ) - 50票目貰った・・・・・・! (2021年9月27日 17時) (レス) @page23 id: 46695abdda (このIDを非表示/違反報告)
なつ(プロフ) - あぁあ…この小説も好き過ぎるわぁ… (2019年5月25日 20時) (レス) id: ebf4a6617f (このIDを非表示/違反報告)
剣城京菜(プロフ) - アミュレットさん» はい!!頑張ります!! (2017年4月1日 17時) (レス) id: d8b1658e8e (このIDを非表示/違反報告)
アミュレット - これからも、頑張って下さいネ(^O^) (2017年4月1日 15時) (レス) id: f72bc11f9a (このIDを非表示/違反報告)
剣城京菜(プロフ) - アミュレットさん» ありがとうございます(>ω<) (2017年3月31日 11時) (レス) id: d8b1658e8e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:剣城京菜 | 作成日時:2017年3月29日 2時