私が私でいるべき理由 2【オロチ】 (ページ21)

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人の居ないところにおろしてもらうとなんとなく言葉が見つからなくて互い無言になる。

その時だった。

「Aちゃん……」

聞き覚えのある優しい声の主はさっちゃんだった。

「あの……その、ごめんなさい……。ぁ、私……やっぱり……」

もじもじと言葉を濁らすさっちゃんの目は少し潤んでいた。

「……私もう怒ってないよ。私ね、さっちゃんが1番好きだったよ。今までありがとう。でももしね、同じようなことがあったら助けてあげて」

「ぁ……私……っっ。私……も、好き。友だちになってくれ……て、嬉しかった……っっ」

ぼろぼろと涙を零すさっちゃんを見て私は安心した。

「えい」

私は泣いているさっちゃんの脇腹をくすぐった。

「ひゃっ、な、なに……」

「笑って」

私はにっかりと笑ってみせた。

さっちゃんはぎこちないけれど笑ってくれた。

「じゃあね、ばいばい」

私は手をぶんぶんと振って駅へ走った。

駅についたもののお母さんはまだ居なかった。

だけどもう時間がない。

「また会えるもん、悲しくないよね」

と言いつつも何故だか涙が少しだけ出てきてしまう。

遠くにお母さんがこちらにくるのが見えた。

「もう、お別れ。じゃあね」

お別れにオロチの手をぎゅっと握った。

オロチも力強く握り返した。

あと数秒。

「ね、耳かして」

オロチは素直に耳をこちらへ傾けた。

私は内緒話をするふりをしてオロチのほっぺに自分の唇を一瞬触れさせた。

みるみるうちにオロチの顔は赤くなっていく。

「へへ、内緒ね」

さようなら。

さようなら。

またね。