夜桜語り 1片【オロチ】

夜桜44 ページ44

一週間が経った今日、日曜日。

風邪はすっかり良くなって元気そのもの。

１つだけ、おかしなこと。

一週間経っても私はオロチ以外の妖怪が見えなくなることはなかった。

いつ見えなくなるか分からないから関わることは極力避けた。

オロチに聞いてみると定かではないが、おそらく後遺症のようなものだと言った。

フミちゃん家で遊んだその帰り、私は一人だけ。

いつもの道を歩いていると何処からかうめき声のような声が聞こえた。

またノガッパだろうかと、うめき声のする路地を覗き込んでみた。

そこにいた者を見て私ははっと息を飲んだ。


「ｲﾀ……ｶｴｾ……」


おどろおどろしい声は私に向けて言葉を発した。

５つある大きな赤色の目はぎょろぎょろと四方八方を見る。

鋭い爪を持つ手は黒い体液を伝わせる。

本能が逃げろと勝手に私の体を動かした。


「ｶｴｾ……‼ｶｴｾ……‼」


声が次第に近くになる。


「こ、来ないでっっ‼」


私の影が覆われたその時、


「ｸﾞｱｱ‼」


物凄い速さで５つ目のお化けは吹っ飛び、ブロック塀に叩きつけられた。


「オロチ‼」


「早く逃げろ‼」


オロチは私の背中を強く突き飛ばした。

私は言われるままに遠くへ走り出した。

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