夜桜語り 1片【オロチ】

夜桜36 ページ36

夕方５時。

私は一人だった。

えんらえんらが帰って一時間程してからオロチは用事ができたと言って出かけてしまった。

一人で散歩をしていたのだが、どうも私はまだ
元には戻っていないらしい。

姿は元通りだが、目に見えないとこで暗闇の影響はまだ残っている。

オロチだけでなく他の妖怪まで見えるようになってしまったようで外に出るとオロチ以外の妖怪を何回も目にした。

しばらくすればまた見えなくなると話しかけたりはせず遠くから様子を伺っていた。

人と同じくいろんな妖怪がいた。

見た目だって違うし性格も違うように見えた。

妖怪は人に取り憑いて人は妖怪に影響される。

影響されることは妖怪それぞれ違うようでその内容はどれも迷惑に思える。

テレビであれば放送できないことさえも少しばかり見てしまった。

それは少し後悔した。

だけどそれ以上に妖怪という存在が不思議で興味が沸いた。


「そろそろ帰んなきゃ」


薄暗くなってしまった空に私はため息をついた。

帰路を辿っていく先に、なにかうめき声のようなものが聞こえた。

そのうめき声が聞こえる方の道を覗き込んでみると、道路のど真ん中でかぴかぴに干からびた何かが落ちていた。

ぴくぴく動いているので生き物のようだ。

正直なんか気持ち悪いし怖いのだったらどうしようかと様子を伺っていた。


「オロチまだかな……」


あわよくば干からびた何かをどうにかしてもらおうかと思ったけどそんな都合よく来るわけないしそもそも私がここにいるのは知らない。

知らないふりしてしまうことを考えたがそうするとオロチのことが頭に浮かんだ。

私は意を決し、それに近づくことにした。


「あの、大丈夫……？」


恐る恐る声をかけると干からびたそれがこちらを見た。

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