夜桜21 ページ21
扉がキィ、とゆっくり閉まった。
「おばあ、ちゃん……」
もう一度扉を開けようと手を伸ばしたが扉は遠のいていて消えてしまった。
「……ぁ」
目を開けると黄金の瞳がこちらを覗き込んでいた。
瞬きをすると、つーっと目から涙が1滴流れ出た。
「……朝?」
そう聞くとオロチは小さく頷き、手の甲で涙を拭った。
ふと左手が握りしめられていることに気づいた。
目で見えるくらいにその手をあげてみると力のない私の手をオロチがしっかりと包み込んでいた。
オロチはすぐに手を離した。
だけど私は離された手でオロチの手を掴んで両手でぎゅっと握りしめた。
「まだこのままがいい……」
まだ、眠たい。
温かくて、優しくて。
こんな風に誰かの温もりを感じながら眠れるのは久しぶりだ。
「……髪飾りね、おばあちゃんすっごい大切にしてたよ。おばあちゃんが居なくなってもなんとなくおばあちゃんが近くにいるような錯覚する……。ねぇ、オロチは普通の子には見えないんだよね?おばあちゃんは見えてたし私も最近見えるようになったし……どうして?ママとパパは見えるのかな?」
オロチはふと目を数秒間閉じた。
「子どもは大人より見えやすい。かと言って誰でも見えるわけじゃない。理由ははっきりとは分からないがそう深く考えるな。知恵熱出るぞ」
「またそうやって馬鹿にする……」
空気をよまずに煩くなる目覚まし時計。
体を起こそうとするとオロチが手を伸ばしてそれを止めた。
「ねぇ、オロチずっとここに居たの?」
そう聞くとオロチは頷いた。
「……起きるまで側に居てくれたの初めてかも。なんか、嬉しいね」
素直にそんな言葉が出てきた。
「随分しおらしいな。いつもは煩くて生意気な癖に」
言い返そうと思ったけど煩くて生意気だと、また言われるとぐっと堪えた。
もう起きる時間だと体を起こし、目をごしごし擦った。
「ねぇねぇ、妖怪ってオロチしか居ないの?」
オロチは考える素振りを見せて
「そこら中にいるぞ。Aは見えていないのだろう」
と言った。
そう言われると何故オロチしか見えないのか疑問に思う。
聞いてみたがオロチはあまり詳しくは知らないらしい。
「着替えるから早く出てってよ」
クローゼットを開けて服をベッドに広げた。
「見られても困るようなものではないだろう」
オロチは余計な一言を言って窓から出ていった。
「……ほんっと余計なお世話だよ」
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剣城京菜(プロフ) - 私も最初映らなかったのでおかしいなと思って何回か試したんです。でも直らなくてずっと放置してました(汗)つい今試してみたらきちんと表示されたのでもう大丈夫だと思います!ありがとうございました!!これからもより良いものが作れるように頑張りますっっ (2017年10月8日 22時) (レス) id: d8b1658e8e (このIDを非表示/違反報告)
青鯖。(プロフ) - あの、表紙の絵が半分より下が映ってないです…。最初はネット繋がり悪いのかな?って思ったんですけど、多分半分しか貼れてないと思います…違ったらすみません汗 夜桜語りも面白かったです!応援してます!長文失礼しました!! (2017年10月8日 19時) (レス) id: 87d9268c5a (このIDを非表示/違反報告)
剣城京菜(プロフ) - アミュレットさん» ありがとうございます!これからも頑張りますっっ! (2017年9月8日 20時) (レス) id: d8b1658e8e (このIDを非表示/違反報告)
アミュレット - 新作が出来て、嬉しいです(^^)これからまた、頑張って下さい! (2017年9月8日 18時) (レス) id: f05737ad1b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:剣城京菜 | 作成日時:2017年9月1日 18時