夜桜17 ページ17
「私のパパね、海外を飛び回ってるんだよ。なんの仕事かは難しくて分かんないけどいっつも忙しくてね、でも。……でもたまに向こうの写真送ってくれるの。……好きだけどそんな話はあまり知りたくない。ママはお洋服作る仕事でいっつも夜遅いの、会えるのはだいたい朝の1時間くらい……ママとパパがいることには変わりないんだけど……。やっぱりわがままかも……」
頭の中がぼやっとする。
渦めいて混ざりあってしまう。
「私がいる」
「それ口説いてるみたいで気持ち悪い」
悪意100%、笑ってやったらオロチは舌打ちをしてそっぽをむいてしまった。
「……怒ってる?」
顔を覗き込むとオロチは片手で私の顔面を掴んだ。
「いたた‼」
緩んだ指の隙間から見えたオロチの髪の間から見えた耳はまっかっかの林檎色。
うまく表現なんてできないけど、胸のあたりがぐちゃぐちゃのぐるぐるした。
でもなんだかこれは悪くない。
「いつまでも夜更かししていては駄目だ。もう帰るぞ」
オロチはひょいと身軽に、散った桜の花びらを舞わせ飛び降りた。
すたすたと去ろうとするオロチに私は大声で呼び止めた。
「降ろして」
「……この前屋根から自力で降りただろう」
オロチは眉をきゅっと寄せた。
「意地悪‼だからオロチは優しくなれないんだ‼」
責めてもオロチはもう見えない。
仕方ないと私は木の幹にしがみついてふらつきながら立ち上がった。
今度会ったとき後悔させてやると心に決め、舞い散る桜の花びらの中へ飛び降りた。
ふわふわの絨毯では地面との距離が掴めず、疲労もあってのことか着地に失敗して尻もちをついてしまった。
右足首に痛みを感たが、大したことじゃないとすぐに立ち上がってひょこひょこと庇いながら出口の方へ向かった。
出口から出るとピンクの光はゆっくりと消えていった。
「A」
先に行っていたはずのオロチは電柱の近くで立っていた。
平然を装って歩いたもののオロチは不審に思ったようで顔をしかめた。
「オロチも早く帰りなよ。じゃあね」
胸元で手をひらひらして私はオロチに背を向けた。
「待て」
突然肩を強く掴まれた。
「な、なに……」
オロチはじっと私の目を見つめた。
何とも言えない気持ちになって、私は目をそらした。
「……足を挫いたのか」
その答えは図星で、YESと答える他に無かったが
私はそう答えず首を横に振った。
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剣城京菜(プロフ) - 私も最初映らなかったのでおかしいなと思って何回か試したんです。でも直らなくてずっと放置してました(汗)つい今試してみたらきちんと表示されたのでもう大丈夫だと思います!ありがとうございました!!これからもより良いものが作れるように頑張りますっっ (2017年10月8日 22時) (レス) id: d8b1658e8e (このIDを非表示/違反報告)
青鯖。(プロフ) - あの、表紙の絵が半分より下が映ってないです…。最初はネット繋がり悪いのかな?って思ったんですけど、多分半分しか貼れてないと思います…違ったらすみません汗 夜桜語りも面白かったです!応援してます!長文失礼しました!! (2017年10月8日 19時) (レス) id: 87d9268c5a (このIDを非表示/違反報告)
剣城京菜(プロフ) - アミュレットさん» ありがとうございます!これからも頑張りますっっ! (2017年9月8日 20時) (レス) id: d8b1658e8e (このIDを非表示/違反報告)
アミュレット - 新作が出来て、嬉しいです(^^)これからまた、頑張って下さい! (2017年9月8日 18時) (レス) id: f05737ad1b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:剣城京菜 | 作成日時:2017年9月1日 18時