なむおりふれんず！ (ページ23)

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拭えぬ不安ページ23

それから、さいたまは双竜と紫煌に話した説明を幽玄にした。
幽玄はふむ、と少し考えるように口元に手を当てた。

幽玄「珍しいのう、今までこのようなことはあらなんだ」
さいたま「双竜ちゃんもそう言ってけど……そんなに縁日にノイズが来るって珍しいことなの？」
幽玄「そうじゃ」

幽玄はさいたまの疑問に肯定するように頷いた。

幽玄「縁日が行われる日には、奴らが近づけぬよう術を町全体に施しておるからのう。滅多なことでは奴らは姿を見せぬのじゃ」
さいたま「なんでだろう……？」

さいたまは首を傾げた。
幽玄も考えるように下を向き、しばらく客室に沈黙が訪れた。

沈黙を破ったのは、幽玄だった。

幽玄「もしや、術が効かぬようになってきておるのかのう……」

さいたまは考えて傾げていた首を戻し、幽玄に向き直った。
幽玄も顔を上げ、さいたまと目を合わせた。

さいたま「……どうして？」
幽玄「……最近、奴らの動きがやけに活発になってきておる」

幽玄は真剣な表情でさいたまへと語る。
普段ならば居心地のよい場所であるはずの客室に、張り詰めた空気が流れた。

幽玄「普段ならば、奴らなぞ歯牙にもかけておらぬような猛者が、次々と飲み込まれていくという報告が最近絶えぬ。お主の言うておった冬竜もそうじゃ。普通、あれ程の実力さえあれば、まず飲まれることなどない」
さいたま「ノイズが、段々強くなってきてるってこと？」
幽玄「……然り」

さいたまの顔に恐怖の色が滲んだ。

さいたま「そ、そんな！今回ですらきたちゃんでもあぶなかったんだよ！？これ以上強くなっちゃったら……無理だよ…………」

さいたまは目に涙を浮かべる。

さいたま「弱い私じゃ、守れない……きたちゃんに、あんな怪我させて…………不甲斐ないよ……私……なんにもできなかった……」
幽玄「大丈夫じゃ」
さいたま「え……？」

幽玄は、きさまがさいたまにするような、とても優しい、見ていてなんだか安心するような微笑みをさいたまへと向けた。

幽玄「大丈夫じゃ。何時も快活なお主に、兄弟の心がどれほど救われておるか、理解していよう？お主は皆には欠かせぬ存在なのじゃ。」
さいたま「……」

幽玄は続ける。

幽玄「なにも嘆くことなぞない。何故1人で抱えるのじゃ。お主は、1人ではない……妾だっておるのじゃ。できぬことで他を頼ることに、いったい誰が文句を言えようぞ」

“1人じゃない”
その言葉は、何故かさいたまの心に深く刺さった。