なむおりふれんず！ (ページ19)

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怪我人は休んで、どうぞページ19

きさまの呟きが聞こえたさいたまは小首をかしげた。

さいたま「幽玄さん？」
きさま「ん？ああ、この町の長だぜ」
女剣士「……幽玄」

女剣士は、何故か幽玄の名に過敏に反応した。
そんなことはつゆも知らず、さいたまはきさまと会話を続ける。

さいたま「その……、幽玄さんに何を伝えに行くの？」
きさま「ノイズに取り憑かれた奴が出たって、一応報告しておいた方がいいと思ってな」
さいたま「そっかあ」

そこで、きさまは漸く表情の思しくない女剣士の様子に気がついた。

きさま「どうした？」
女剣士「……いや、お前達は今すぐ屋敷へと向かうのか？」
きさま「ああ」

「そうか……」と、女剣士が思い悩んだ様に俯いた、その時、
さいたまが突然「ええっ！？」と大きな声を上げた。

さいたま「い、今ぁ！？ダメだよ！きたちゃん怪我してるじゃん！！」

突然割って入って来られ、驚いたきさまと女剣士は同時に「え」と声を漏らした。
きさまはさいたまに応える。

きさま「え？別に大したことねえよ。それに直ぐに報告しない方がダメだろ」
さいたま「休まない方がダメっ！！」

さいたまは未だにポカンとしている女剣士の方へ歩み、きさまと女剣士の間に割って入るように立ちはだかった。そして女剣士にペコッと頭を下げた。

さいたま「お願い剣士さん！きたちゃんを私達の家……2000家に連れてってあげて！お屋敷には私1人で行くから！」
きさま「は、はぁ！？おい！！」

女剣士は突然頼みごとをされて、若干困ったような顔をしつつ、……どこか安堵にも似た複雑な表情をした。
そして、頭を下げるさいたまに向かって、静かに頷いた。

女剣士「……わかった。怪我人に無理は掛けられないからな」
きさま「え！？おい！！俺の意見ガン無視かよ！！大したことねえっつってんだろ！！」

さいたまは顔を上げると、パァッと表情を輝かせ、女剣士の手を取り、ニコッととても明るい笑顔を向けた。

さいたま「ありがとう！初対面なのに親切だね！」
女剣士「いや、これくらいならなんなりと」
きさま「……お前ら」

さいたま「それじゃーいくねー！帰り道気をつけてねー！」

さいたまは大きく手を振ると、屋敷への道を進んで行った。
きさまは若干反抗的な目でさいたまを見送った。

きさま「全く……少しは人の話聞けよ……」
女剣士「……」

そんなきさまを他所に、女剣士はひどく寂しそうにさいたまを見送り、

女剣士「……“初対面”か」

と、静かに呟いた。