なむおりふれんず！ (ページ14)

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取り憑かれし竜ページ14

人が逃げ、閑散とした屋台の群れを抜けたその先に、そいつは居た。

まるで樹氷のように透き通った水色の角、ちょっとやそっとじゃ傷つかないであろうダイヤモンドのような白銀の鱗、氷の結晶で作られたかのような翼膜をもつ広い翼、かの竜の玉体を支えるのに相応しき立派な四肢、鋭い爪と牙……。

恐らくこんな状況でなければ、この氷の竜を見た者は口々に『美しい』と零すだろう。

しかし、今の彼女はそんな本来の美しさや気高さを全てかき消してしまうほどにどす黒く、禍々しいオーラに包まれていた。

きさま「お前……冬竜か？」

――グルルルル……

竜は声に反応して、きさまの方を向いた。

きさまを見据える、その瞳は、

……白目と黒目の区別もつかぬほど、紫に怪しく輝いていた。

――ガァアアアアアッ！！！

突然、冬竜は張り裂けるような大きな咆哮をあげた。
その後、大きく息を吸い込むと、きさまに向かって氷のブレスを吐いてきた。

きさま「うぉっ！？……っぶねぇ！！」

バキィッ

きさまは間一髪で氷ブレスを避けることができた。
冬竜の氷ブレスが直撃した、先程まできさまが立っていたその位置には、ブレスによって急激に冷やされた空気が凍り、巨大な氷柱が立っていた。

当たっていたらどうなっていただろう？
きさまは背筋が凍る思いがした。

冬竜は攻撃の手を緩めることなく、次々ときさまに向かってブレスを吐いた。

きさま「っ……くそっ！攻めるしかねえ！」

きさまはブレスを避けながら間合いを詰め、硬そうな鱗に覆われていない腹部を、包丁で思いっきり切りつけた。

――ギャアアアアアァァァッ！！！

柔らかい部位を切りつけられたのが相当効いたのか、冬竜は悲鳴のような叫び声を上げた。

きさま「なっ……」

きさまがつけた腹部の傷から流れ出たのは、竜に流れているはずの真っ赤な血ではなく……

……ドロドロとした、どす黒い液体だった。

きさま「な、なんだ……あれ……？黒い……血？」

きさまが戸惑い、少し立ち止まってしまった、そのとき、

きさま「……つぁっ……！」

見えなかった。
一瞬だった。
捉えられぬほどの速さで、先程まで苦しみ悶えていたはずの冬竜がきさまに近づき、その鋭い爪で、きさまの片腕を引き裂いていた。

きさま「ってぇ……くそっ……！」

今度は体を引き裂いてやろうとばかりに爪を振り下ろす竜の攻撃を、きさまはまたもやすんでのところで避けた。