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蓮side
──…海真が熱を出したらしい。
寮の廊下で吸入器を持った湊と偶然会ったおれは、これからバイトだという湊に代わって海真の部屋の前へ来ていた。
軽く扉を叩いて、それからゆっくり開ける。
目には真っ先に、ベッドの上でぐったり愁に体を預けてる海真が飛び込んできた。
「吸入器持ってきたけど…大丈夫か?海真」
「ありがとう。なんか熱高くてやばそう。湊は?」
「バイトだってさ」
海真の黒いサラサラの髪を撫でながら、困ったようにおれを見上げてくる愁。
愁の肩のところに顔を埋めていた海真が、のそりと顔をあげておれを見た。
「…れん、なんでいんの」
「ん?心配だったから」
にっこり笑って答えると、海真は驚いたように潤んだ瞳を瞬く。
それからちょっと迷ったあと、控えめに微笑んできてくれた。
「…ありがと」
だいぶ彼の熱が高いことを、おれはここで実感。
海真がにっこり微笑んでお礼を言ってくるなんて、天変地異の前触れだと思う。
「どういたしまして」
そしてそんな素直な海真は可愛くって、おれは彼の頭を軽く撫で回した。
いつもこんな風に素直だったら嬉しいんだけどな。
「…れん、」
手を離すと、名残惜しそうな声で名前を呼ばれた。
こんな海真の声聞いたことなくて、思わず固まる。
潤んだ瞳はまっすぐおれを見ていて……ああ、甘えてくれてるんだ。
「…海真頭痛いんだって」
愁がそっと情報を囁いて、それから小さく微笑む。
「じゃあ蓮、せっかく来てくれたんだし看病交代しよ。僕より蓮のが甘やかすの上手だろうし」
…というわけで、愁と場所を交代。
海真の熱い体がずしりともたれかかってきて、さっきより不安が募った。
「了解。任せろ!」
……でもきっと、1番不安なのは海真。
だからこの不安が海真に伝わらないように、おれは笑顔で愁を見た。
愁は「何かあったら連絡してね」とだけ残して、部屋を出て行く。
「…頭痛いんだっけか。今も?」
部屋が静かになったところでそっと聞くと、海真はこくりと小さくうなずいた。
首んとこに海真の髪が当たって、くすぐったいけど我慢。
「……あと何か、いき、くるしい…」
ケホ、と海真が小さく咳を零す。
…さっき持ってきた吸入器が早速必要になりそうな予感だ。
おれは念の為吸入器を手繰り寄せ、近くに持ってきた。
「そっか、辛いな…」
そう言いつつ海真の髪を撫でれば、彼は気持ち良さそうに目を閉じた。
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暁☆(プロフ) - ayahanaさん» こちらこそいつも優しいコメントありがとうございます! おかげでまだまだ続けられそうです (*´ `*) ぜひ今後ともよろしくお願い致します〜! (2021年2月13日 9時) (レス) id: f1423fd483 (このIDを非表示/違反報告)
ayahana(プロフ) - 更新ありがとうございます!まだ続けて下さるどころか頻度上がるかもということで凄く嬉しいです、次のお話も楽しみにしています! (2021年2月13日 0時) (レス) id: a867efffe4 (このIDを非表示/違反報告)
暁☆(プロフ) - ayahanaさん» お待たせして申し訳ありません!こちらこそ読んでくださりありがとうございます〜<(_ _)> (2020年8月20日 7時) (レス) id: f1423fd483 (このIDを非表示/違反報告)
ayahana(プロフ) - 更新ありがとうございます! (2020年8月20日 0時) (レス) id: a867efffe4 (このIDを非表示/違反報告)
暁☆(プロフ) - りんごさん» ありがとうございます!頑張りますね! (2020年6月23日 20時) (レス) id: f1423fd483 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:暁☆ | 作成日時:2018年6月15日 20時