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陵side
「ん、ぇ...っゲホ、ゴホッ...」
バタバタと音をたてて、洗面台に、消化されていない昨日の晩ご飯が落ちていく。
トイレに入った瞬間、限界を悟った俺は早々に個室に入るのを諦め、洗面台に手をついていた。床よりはマシだろう。
このまま座り込んでしまいたいのを抑えて、とりあえず汚れた洗面台に水を流す。
勢い余って飛び散っていたものもトイレットペーパーで吹き取ると、見た目だけは元通りになった。
俺の体調の方も、1度吐いてすっきりしたせいか、嫌なだるさが残っているだけで、特に異常はない。大丈夫。
鏡に写る自分の顔色の悪さには若干引いたけれど、まあそれほどの熱ではないだろう。
それでもやっぱり動く気にはなれなくて、ぼうっと鏡の中の自分とにらめっこをしていると、5時間目終了のチャイムが鳴り始めた。
...そろそろ動かないと、休み時間中にトイレを使う人が来てしまう。
はあ、と小さくついたため息は、思っていたより熱を持っていて、またため息をつきたくなった。
のろのろとトイレの扉を開けて、廊下に出る。
一瞬ぞくりと背中に悪寒が走って、俺は思わず体を縮めた。
このまま保健室に行って、運が良ければきっと、石谷先生が車で送ってくれる。
車酔いする気しかないけれど、でも歩いて帰るよりはよっぽどマシだ。
あとちょっとだから、と自分に言い聞かせながら、重だるい体を必死に動かす。
休み時間に入った廊下は人の声がうるさくて、思わずうつむきながら歩いた。
「あ、陵!」
そんな中、一際よく通る声に名前を呼ばれる。
決して大きいわけではない。でもまっすぐで、よく響
く声。
「...蓮」
顔をあげると、両腕に資料を抱えた蓮が目に入った。
...既視感。
前にもこんなことがあって...確かあのときは蓮じゃなくてひろだったけれど。
「陵、今暇?おれこのあと図書室移動なんだけど、先生に資料頼まれちゃって...」
.....嫌な予感は、的中するものだ。
すごく申し訳なさそうな顔をした蓮が、代わりに資料室までこれ持ってってくれないか?と頼んできた。
確かに図書室と資料室はほぼ反対の位置にあって、休み時間中にどっちも行くのは大変だろう。
...それに蓮は、俺の体調のことなんて知らないわけだし。
「はいはい。資料室ね」
断ることなど出来ずに、蓮の手から資料を取り上げる。
──大丈夫だろう、なんて何の根拠もない自信は信じちゃいけなかったのに。
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暁☆(プロフ) - ayahanaさん» こちらこそいつも優しいコメントありがとうございます! おかげでまだまだ続けられそうです (*´ `*) ぜひ今後ともよろしくお願い致します〜! (2021年2月13日 9時) (レス) id: f1423fd483 (このIDを非表示/違反報告)
ayahana(プロフ) - 更新ありがとうございます!まだ続けて下さるどころか頻度上がるかもということで凄く嬉しいです、次のお話も楽しみにしています! (2021年2月13日 0時) (レス) id: a867efffe4 (このIDを非表示/違反報告)
暁☆(プロフ) - ayahanaさん» お待たせして申し訳ありません!こちらこそ読んでくださりありがとうございます〜<(_ _)> (2020年8月20日 7時) (レス) id: f1423fd483 (このIDを非表示/違反報告)
ayahana(プロフ) - 更新ありがとうございます! (2020年8月20日 0時) (レス) id: a867efffe4 (このIDを非表示/違反報告)
暁☆(プロフ) - りんごさん» ありがとうございます!頑張りますね! (2020年6月23日 20時) (レス) id: f1423fd483 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:暁☆ | 作成日時:2018年6月15日 20時