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助けて 1 ページ23





陵side


何となく、朝からだるかった。

何となくってだけで別に確信もなかったし、隠し通せるくらいだったから、いつも通りに学校に行っていつも通りに授業を受けて。

…午前中は、そこまで苦じゃなかった。


問題は今。5限があと5分で終わる頃。


俺はぐにゃりと歪んで気持ち悪い黒板から目をそらし、口の中に溜まった生唾を飲み込んだ。

…気持ち悪いと感じ始めたのは、20分くらい前。

その頃はまだ、何となく気持ち悪いってだけで吐き気なんてなかったのに、今はもう、耐えてるのが辛いくらい。

飲み込んでもすぐに溜まってくる生唾がうっとうしくて、こめかみを伝う冷や汗が気持ち悪くて、俺はそっとため息をついた。


…あと5分。たった5分だから。


自分に言い聞かせるように心の中で呟いて、静かに目を閉じる。

視覚情報が遮断されて、少しだけ楽になった、気がした。


もう一度生唾を飲み込み、机に突っ伏す。

頬に当たった机の温度が気持ち良くて、もうこのまま眠ってしまおうかと思った、そのとき。


「白浜」


名前を呼ばれ、マジかよ、と一瞬で目が覚める。

重たい頭を上げて視線を向けると、黒板の前に立つ教師と目が合った。

数学の、確かまだ3年目とかの若い教師。
整った顔と親しみやすさが生徒から人気...だった気がする。

揺れる視界の中そんなことを考えていると、こっちを見ていた先生の顔が曇った。


「顔色悪いな...保健室行けるか?誰かついてって...」


「オレ行きます!」


教師の言葉に被せるように、元気の良い声が教室に響く。

...おまえ、5時間目の数学とかたいていいっつも寝てるじゃん。何で今日は起きてんだよ。

ガタンと勢い良く席を立ってこっちに駆け寄って来ようとする恵に、思わず苦笑がこぼれた。


「...1人で大丈夫なんで」


それでも今から保健室に行くには、先に吐き気の限界が来そうで、恵の好意はやんわり断っておく。

トイレ寄ってから保健室行きたいし、吐きに行くのに恵を連れていくのは普通に嫌だ。
1人のが気分的に楽だし。


「大丈夫なら良いんだけど…倒れるなよ」


先生の心配そうな目線には軽くうなずきだけを返して、俺はゆっくり席を立ち上がった。

視界は揺れていて気持ち悪いけど、立てないほどではない。
歩けないほどでもない。


一歩踏み出した瞬間に走った寒気にうんざりしながら、俺は後ろの扉から教室を出た。





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暁☆(プロフ) - ayahanaさん» こちらこそいつも優しいコメントありがとうございます! おかげでまだまだ続けられそうです (*´ `*) ぜひ今後ともよろしくお願い致します〜! (2021年2月13日 9時) (レス) id: f1423fd483 (このIDを非表示/違反報告)
ayahana(プロフ) - 更新ありがとうございます!まだ続けて下さるどころか頻度上がるかもということで凄く嬉しいです、次のお話も楽しみにしています! (2021年2月13日 0時) (レス) id: a867efffe4 (このIDを非表示/違反報告)
暁☆(プロフ) - ayahanaさん» お待たせして申し訳ありません!こちらこそ読んでくださりありがとうございます〜<(_ _)> (2020年8月20日 7時) (レス) id: f1423fd483 (このIDを非表示/違反報告)
ayahana(プロフ) - 更新ありがとうございます! (2020年8月20日 0時) (レス) id: a867efffe4 (このIDを非表示/違反報告)
暁☆(プロフ) - りんごさん» ありがとうございます!頑張りますね! (2020年6月23日 20時) (レス) id: f1423fd483 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:暁☆ | 作成日時:2018年6月15日 20時

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