甘やかして 1 ページ16
愁side
「……しゅう、」
きゅ、と僕の着ているパーカーの裾を握るこの手は、陵のもの。
今日何度めかもわからない陵の行動に僕は、どうしたの?となるべく優しい声で問いかけた。
──事の起こりは、今日の朝。
憂鬱な月曜日に、学校行くのめんどくさいーと嘆きながら朝ごはんを食べる、いつもの食堂。
その中に、陵の姿がなかったのだ。
寝坊でもしたのか、と軽い気持ちで陵の部屋に行くと、そこでは顔を真っ赤に火照らせた陵が眠っていて。
あわてて彼を起こして体温を計ると、平熱より2℃ほど高い数字が表示されて、そのまま学校お休みコース。
僕が看病のために陵について学校を休むことになったんだけど…。
「トイレ行きたい?どこか辛くなっちゃった?」
熱のせいか、陵がとんでもなく幼いのだ。
いつもはどちらかというとお兄ちゃんポジの彼が。
さっきも冷却シートを変えるために立ち上がっただけで号泣されたし、みんなからのLINEを確認するためにスマホを見れば、同じく泣かれた。
「……とい、れ」
荒い息の中、潤んだ瞳で訴えてくる陵に、僕は優しく笑ってみせる。
「立てる?」
「…ん、」
ぐ、と腕に力を入れて体を起こそうとする陵。
でも高熱のせいで力が上手く入らないのか、なかなか上手くいかない。
ぽろぽろと彼の目から涙があふれて、僕はあわてて陵の体を起こした。
……ここからが問題。
僕の身長では、どうやっても陵のことを抱っこできないのだ。
「…ごめんね陵。ちょっとだけ頑張れる?」
こくり、といつもよりもゆっくりうなずく陵。
肩を貸しながら立ち上がると、すぐに彼の体はぐらついた。
あわてて陵の体を支える。
その体は燃えるように熱くて、思わず手を引っ込めそうになった。引っ込めたら大変だからしないけど。
「…歩ける?」
一応そう聞くものの、歩いてもらわないとすごく困る。
「………あるく」
陵もそれはわかっているみたいで、歩ける、ではなく歩く、と返された。
一歩進むだけでふらつく陵を支えながら、トイレに向かう。
着いた頃には僕も陵もふらふらで、身長伸ばしたいな、と切実に思った。
「じゃあ僕ここで待ってるから。鍵かけないでね」
何かあったときのために、鍵はかけないでいてもらう。
うん、とうなずいた彼はやっぱり幼くて、何となく落ち着かなかった。
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暁☆(プロフ) - ayahanaさん» こちらこそいつも優しいコメントありがとうございます! おかげでまだまだ続けられそうです (*´ `*) ぜひ今後ともよろしくお願い致します〜! (2021年2月13日 9時) (レス) id: f1423fd483 (このIDを非表示/違反報告)
ayahana(プロフ) - 更新ありがとうございます!まだ続けて下さるどころか頻度上がるかもということで凄く嬉しいです、次のお話も楽しみにしています! (2021年2月13日 0時) (レス) id: a867efffe4 (このIDを非表示/違反報告)
暁☆(プロフ) - ayahanaさん» お待たせして申し訳ありません!こちらこそ読んでくださりありがとうございます〜<(_ _)> (2020年8月20日 7時) (レス) id: f1423fd483 (このIDを非表示/違反報告)
ayahana(プロフ) - 更新ありがとうございます! (2020年8月20日 0時) (レス) id: a867efffe4 (このIDを非表示/違反報告)
暁☆(プロフ) - りんごさん» ありがとうございます!頑張りますね! (2020年6月23日 20時) (レス) id: f1423fd483 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:暁☆ | 作成日時:2018年6月15日 20時