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海真side


「……海真、体調悪い?」


蓮のその言葉にとっさに取り繕ってしまった自分に、嫌気が差した。


何で、体調悪いの一言が言えないんだよ。

うなずけば良いだけなのに、何で。

ほんとはスマホの画面見るのも辛いんだって、言えば良いのに。

たったそれだけのことが、言えなくって。


──迷惑、かけたくないから。


「手伝ってくれるのか?」


代わりにこぼれるのは、いつも通りの声。

ほんの少しでも声がかすれていれば、気付いてくれたのかな。


「…まあ、そんなかんじ」


蓮は、腑に落ちない、というような顔をしながらうなずいた。

俺は、右手に持っていたスマホをポケットにしまう。


「じゃあ蓮が作って。お粥くらい一人で十分だろ。俺ひろのこと看てくる」


こんなに不安定な視界じゃきっと、迷惑をかけるだけだ。

蓮が困ったように眉を下げる。


「でも海真、」


「俺が何?」


気付いて欲しいのに、気付いて欲しくない。


──蓮は、優しいから。

俺のこと心配して、優しく看病してくれるだろう。

蓮だけじゃない、きっと他のみんなも、ひろだって。


ただでさえひろの具合が悪いのに、俺まで体調悪いなんて、いくらなんでも迷惑すぎる。

優しいみんなは何も言わないだろうけど、でも、やっぱりめんどくさいって思うだろうし。

第一、せっかくの土曜日が俺のせいでつぶれるなんて、俺が耐えられない。


「あと頼むから」


これ以上蓮の前にいると隠しきれなくなりそうで、俺は彼の横を通り抜け、キッチンを出た。

蓮が浮かない顔のまま、わかった、とうなずく。

重たい足を何とか動かし、俺はひろの部屋に向かった。


歩くたびに揺れる頭が、視界が、気持ち悪い。

こぼれる吐息は嫌な熱を持っていて、廊下に出たところで思わず立ち止まる。

ちょっとだけ、と思って壁に手をつくと、何となく楽になった気がした。

そのまま座り込んでしまいそうになるのを抑え、無意識に滲んだ涙を乱暴に拭う。


大丈夫。まだ、大丈夫。


無理やり自分を励まし、俺は壁についていた手を離した。

ふらつきそうな体を抑え、歩き出す。


いつも通りの表情を作って、俺はひろの部屋の扉を開けた。





 

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暁☆(プロフ) - ayahanaさん» こちらこそいつも優しいコメントありがとうございます! おかげでまだまだ続けられそうです (*´ `*) ぜひ今後ともよろしくお願い致します〜! (2021年2月13日 9時) (レス) id: f1423fd483 (このIDを非表示/違反報告)
ayahana(プロフ) - 更新ありがとうございます!まだ続けて下さるどころか頻度上がるかもということで凄く嬉しいです、次のお話も楽しみにしています! (2021年2月13日 0時) (レス) id: a867efffe4 (このIDを非表示/違反報告)
暁☆(プロフ) - ayahanaさん» お待たせして申し訳ありません!こちらこそ読んでくださりありがとうございます〜<(_ _)> (2020年8月20日 7時) (レス) id: f1423fd483 (このIDを非表示/違反報告)
ayahana(プロフ) - 更新ありがとうございます! (2020年8月20日 0時) (レス) id: a867efffe4 (このIDを非表示/違反報告)
暁☆(プロフ) - りんごさん» ありがとうございます!頑張りますね! (2020年6月23日 20時) (レス) id: f1423fd483 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:暁☆ | 作成日時:2018年6月15日 20時

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