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海真side


ひろの部屋に入ると、病人がいる部屋特有の、もわっとした熱気が体を包み込んだ。

それなのに寒気を感じるのは、やっぱり俺の体調がおかしいせいだろう。

今この部屋にいるのは蓮と愁、ひろ。

ベッドに寝転んでいたひろが、俺と湊へ目を向けた。


「…かい、ま、そう…」


ゆらゆらと揺れるひろの瞳は、熱のせいか酷く潤んでいる。


「うわ、だいぶ熱高そうだね」


そう言って心配そうにひろの頭をなでる湊。

いつものツンツンした態度はどこへやら、ひろは嬉しそうにふにゃりと笑った。


「そういえば恵と陵は?」


この部屋にいない二人が気になったらしい湊が、首を傾げる。

蓮があぁ、とうなずいた。


「恵は部活の練習試合の助っ人だって。さっき呼ばれてあわてて出てったよ。陵はバイト」


恵は特別何かの部活に入っているわけじゃないけど、運動神経が良いからよく部活の練習試合に呼ばれる。

本人いわく、スポーツは全部好きだから一つだけ部活を選ぶことができないそうだ。


「あ、おれももうバイト行かなきゃだ」


壁にかかっている時計を見た湊が、さっき来たばかりにも関わらず、部屋の扉に手をかける。

黙ってひろの頭を撫でていた愁が、湊を見てにこ、と笑った。


「行ってらっしゃい。ひろのことは僕らに任せてね」


そんな愁に、湊も笑い返す。


「うん。行ってきます」


彼が部屋を出て行き、ぱたんと扉が閉まった。

蓮が心配そうに眉を下げ、ひろを見る。


「お粥とか作る?さっき吐いちゃったから何か食べないと薬飲めないし」


「そうだね」


愁がこくりとうなずき、俺を見た。


「海真お粥作れる?」


さっきから一言もしゃべらない俺を不審に思ったのだろう。

いつもだったら何も思わない眉をひそめた愁の顔が、ずきんと胸に刺さって。


「……作る」


作れる、じゃなくて作る、とこぼれたのは、どうしてだろう。

ふわふわする頭じゃもう、何も考えたくなくて。


俺はそっと、もわっとした熱気のただよう部屋をあとにした。



 

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暁☆(プロフ) - ayahanaさん» こちらこそいつも優しいコメントありがとうございます! おかげでまだまだ続けられそうです (*´ `*) ぜひ今後ともよろしくお願い致します〜! (2021年2月13日 9時) (レス) id: f1423fd483 (このIDを非表示/違反報告)
ayahana(プロフ) - 更新ありがとうございます!まだ続けて下さるどころか頻度上がるかもということで凄く嬉しいです、次のお話も楽しみにしています! (2021年2月13日 0時) (レス) id: a867efffe4 (このIDを非表示/違反報告)
暁☆(プロフ) - ayahanaさん» お待たせして申し訳ありません!こちらこそ読んでくださりありがとうございます〜<(_ _)> (2020年8月20日 7時) (レス) id: f1423fd483 (このIDを非表示/違反報告)
ayahana(プロフ) - 更新ありがとうございます! (2020年8月20日 0時) (レス) id: a867efffe4 (このIDを非表示/違反報告)
暁☆(プロフ) - りんごさん» ありがとうございます!頑張りますね! (2020年6月23日 20時) (レス) id: f1423fd483 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:暁☆ | 作成日時:2018年6月15日 20時

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