男子高校生の体調不良集 part2

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愁side


夢を、見た。

僕を置いて、みんながいなくなる夢。






「…っ！」


ガバ、と勢い良く体を起こす。

ずきりと鈍い頭痛がしたけど、そんなの気にならなかった。

夢だった、と安堵すると同時に、冷たいものが頬を伝う。


座ってスマホをいじっていた陵が、目を上げた。

泣いている僕に驚いたのか、彼は軽く目を瞬く。


「…っりょ、ぉ…」


「え、ちょ、待って何」


陵がそこにいることに安心すると、さらに涙が溢れてきた。

陵は焦ったように瞳を揺らし、ぎこちない手つきで僕の背中を撫でてくれる。

その彼の手が止まった。


「熱い。絶対熱上がってるだろ」


顔をしかめて、「体温計取ってくる」と立ち上がった陵の、服のすそを掴む。


「や…、いかないで…」


また涙が零れた。

きっと熱のせいで、涙腺がおかしくなっちゃったんだろう。

陵が、目を見開く。


「…変な夢でも見たの？」


相変わらず陵は鋭い。


「…みて、ないよ」


何となく言えなくてそう嘘をつくと、陵はふーん、と嫌な笑みを浮かべた。


「じゃあ何で引き止めんの？」


わかってて、面白がっている声。

僕が答えに詰まると、理由ないなら行くけど、と背を向けてくる。

僕はもう一度彼の服を引いた。


「…っみ、んなが…いなくなる、ゆめ、みたの…」


みんなが、僕を振り向きもせずに、いなくなる夢。

陵が驚いたように目を見開く。


それから、ふわりと優しく微笑した。


「何そのくだんない夢。俺らそんな薄情に見える？」


小さく首を振って答えると、わかってんじゃん、と頭を撫でられる。


「仕方ないからここにいてあげる」


そう囁いた陵の声は、いつもの何倍も優しかった。

おまえはとりあえず寝ろ、とベッドに寝かされる。

僕は大人しく布団に潜った。



僕の頭を撫でてくる陵は、見たことないほど優しい顔をしている。


「どこにも行かないから。おやすみ」


その優しい声に、安心して。


さっき起きたばかりなのに、またやってきた眠気に身を任せ、僕はそっと目を閉じた。






　

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